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2020.05.16

雨漏りの路を考える その③

顧問の坪内です。いつも池本工務店の事業にご支援ご協力いただきまして、ありがとうございます。
前回は斜めに降る雨の話から『風の性質』と『雨の重力』の話をしましたので、
今日は実際に「雨が当たった建物」の話をします。

この建物は私が通勤の途中で見かける、3階建重量鉄骨造で、外壁は小波スレート(屋根は大波スレート?)で施工された倉庫です。
スレートは吸水し易い素材なので、雨がよく当たる箇所は黴類(カビ)・地衣類(ちいるい。コケ等のこと。)で黒く変色しています。



雨で濡れた箇所を『雨掛かり(あまがかり)』と言います。
正面の壁には屋根が無く、雨掛かりが有ります(黒い箇所)。一方、向かって左側には屋根があり、
軒の下に雨掛かりの無い箇所が存在しています(白い箇所)。


雨掛かりのある笠木


雨掛かりのない軒下

さらに、壁にも雨掛かりのない箇所が斑(まだら)にあります。
壁は8尺の小波スレートが重ね張りしてあるのですが、重ね張りした接合部はスレートの厚み分だけ出ていますので、
その下は雨掛かりがなく、白いままです。
風を伴う雨水が壁に当たると、雨掛かりの有る・無し(多い・少ない)、またその経年によってこの様に差が現れるのです。


雨掛かりのない斑(まだら)模様

同じように施工され、同じように雨に濡れていますが、同じような雨掛りの箇所はありません。
それが模様に現れているのです。この時、雨水は人工的な速さが無くなり、重力によって落ちる力だけに変換されています。

この雨水が外壁面のクラック(割れ目など)、目地のシーリングのピンホール(小さな穴)、サッシのパッキン劣化箇所などを探して進入するのです。
やがて雨染みとなり、目(視覚)や雨音(聴覚)に訴えて「雨漏り」となります。

シャワーホースで水道水を使用しての雨漏り検査は、人工的に水に流速を与える為、時々悪さをし、雨の動きを邪魔して『雨漏りの路(みち)』を消してしまう事があるのです。
建物への『雨掛かり』について、ご理解いただけましたでしょうか。

またこの写真には、建物の経年劣化について、色々教えてくれる現象が多くあります。
昨今流行りの今風MODERN住宅ですが、軒の出幅・ケラバの出幅が少なく壁面の大きい【気候的に雨の少ないヨーロッパ・地中海的】デザインが流行っています。
しかし実は『雨掛かり』の壁が広く、雨漏りのリスクの大きいデザインなのです。
この写真を通して、注意しなくてはいけない事がよく理解出来ると思います。

現在、日本住宅の外壁にはこの種のスレートに塗装を施した、窯業系サイディングと呼ばれる材料が多く使用されています。
さらに経年変化についてお話をすると、脱線好きな私なので関連した他の話に逸れてしまう事が多く・・・・・・またの機会に説明します。

まだまだ難しい?もう少し知りたい方は東海大学名誉教授 石川廣三先生が『雨仕舞いのしくみ』という本に、興味深く書かれていますのでご一読を。
雨漏りを勉強している人にはバイブルのような本です。
お付き合いいただいて、ありがとう御座います。(続く)