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2020.11.28

熱の移動と水分子を考える その⑭ 『屋根の雪景色と熱と水蒸気移動5』 陶器瓦の雪模様

顧問の坪内です。
いつも池本工務店の事業にご支援・ご協力いただきまして、ありがとうございます。


帰り道に屋根の雪模様を観察していると、陶器瓦の屋根がいくつか見えてきました。
陶器瓦には和型(J形)、洋型(S)、平板瓦(F)があります。

日本瓦の歴史は古く、仏教伝来とともに大陸から渡ってきたので538年とも言われています。
ただ文献によれば、588年に百済から4人の瓦博士と寺工が来たとされています。

和型・粘土瓦は、古くは山と谷のある本葺き施工が続いたのですが、
西村五兵衛正輝 (のちに西村半兵衛と改名)、近江大津の人(三井寺用達の瓦工)が、
1674に山と谷の付いた今の日本瓦の形(桟瓦)発明したとされています。
それから和型・粘土瓦が主流となりました。

一方、洋型は明治時代西洋から洋館風住宅とともにS型のスペイン瓦、
平板のフランス瓦が輸入され使用されました。
それ以降、平板系フランス瓦は雨漏りがし易く廃れ、S瓦が洋風瓦として残りました。

平板系の防水構造は今でも同じ形状で、経年により「溝に埃が堆積」して、雨漏りし易い瓦です。
ただ近年は、下地の防水シートが良質で、雨漏りを防いでいます。

セメント瓦は戦前からエネルギー問題や輸入材の入手の問題から製造が始まり、
粘土・陶器瓦と比較して安価なので、戦後復興に多く使用され、
昭和40年代まで四国や九州を中心に普及しました。
少し重たくて型に嵌めて成形し、形状が同じで隙間が無く(陶器瓦は焼いて造るので歪んで隙間が出来て、
風が入るので弱いと言われて)、台風に強いと言われていました。
近年は対台風性能の解析が進み、屋根材飛散のメカニズムが明確になったため、
この考えが間違っていたことが分かるのです。

昭和40年代の終わり頃から「モニエル瓦・センチュリーオン」と呼ばれる洋型セメント瓦が流行しました。
昭和60年頃、同じく「ホームステット」と呼ばれた平板セメント瓦が流行しました。
それからしばらくして、陶器瓦にもその平板系デザインが流行してきました。

⑧陶器瓦の積雪模様

ここでは熱と水蒸気を考えます。

この屋根材は陶器平板瓦で、屋根形状は寄棟です。 


帰り道の陶器平屋根

1枚としては、肉厚が厚く重たい瓦です。
(波形と比較すると平板は割れ易いので厚くなっています。)

設置方法は棟側裏面に凸形状が付いており、桟下地に引っ掛けながら固定していきます。
従って、屋根材と野地板の間には空洞があり、小屋裏からの熱移動後には、
熱は分散する傾向にあります。


通常の屋根の状態

①人の有無
・屋根形状が寄棟なので、水平棟に熱気や水蒸気が集まる傾向にあります。
・また、室内から発生した熱が屋根面を溶かしているのが確認できます。

②換気棟の有無
・水平棟の近くの雪が融けています。
・熱や水蒸気が、換気棟を通じて排出されています。
・換気棟の機能が発揮されていることが分かります。
・おそらく天井裏で結露は発生していませんので嬉しいことです。


降雪時の屋根の状態

⑨S瓦の積雪模様

 

この屋根材は陶器製S瓦です。屋根形状は切妻です。
1枚としてSの字形をしており、山と谷の高低差の大きい瓦です。


通常の屋根の状態

①ここでは熱と水蒸気を考えます。
 ・瓦断面積が形で大きい重たい瓦です。
 ・設置方法は現状では棟側裏面に凸形状が付いており、桟下地に引っ掛けながら固定していきます。
 ・従って屋根材と野地板の間には空洞があり、小屋裏からの熱移動後には、
  熱は分散する傾向にあります。


降雪時屋根の状態

②人の有無
 ・屋根形状は切妻なので、熱気や水蒸気は水平棟部に均等に集まる傾向に有ります。
 ・ここでは室内から発生した熱が小屋裏に流れ屋根面を溶かしているのが確認できます。
 ・瓦の高低差が激しいので、瓦の谷部と山部の融け方が異なっているのが確認されます。
 ・雪の降るのが終わると、また別の現象が現れると考えられます。(山の雪が谷に落ちる)

)換気棟の有無

・水平棟の近くの雪が2箇所融けています。
・熱や水蒸気が、換気棟を通じて排出されています。
・換気棟の機能が発揮されていることが分かります。嬉いことです。

いぶし瓦の積雪模様

同日、枚方へ行く途中に撮影した写真です。
入り母屋屋根の純和風式で、伝統木造建築でいぶし瓦の建物です。
軒先部分は雪が融けていないことが分かります。
これは軒の裏側からも冷やされ、部屋内と軒の出の屋根温度の違いが現れているのです。
雪国ではこのような現象から「すがもれ」と呼ばれる現象が誘発されることが指摘されます。

住まう人が熱を発する。水蒸気を発する。
この二つが結露の発生に影響します。

ここでは熱を考えています。


降雪時の屋根の状態

雪模様の屋根をいくつかご覧いただきました。
じっくりと観察することで、屋根の構造、材質、施工法、人の有無等が分かります。

冬になると車窓から、屋根の霜模様や雪模様を撮影します。
なるべくなら、南側の窓に席を取ります。
建物の北側の屋根の積雪模様がよく見られるからです。
そして後でじっくりと見るのが楽しみです。

⑪竹林の積雪模様

同日に見た竹林に降った雪模様です。
コメントは何もありませんけど。

 

 

 

 降雪時の竹林の状態



心が落ち着きますね。
ご覧ください。

どうもありがとうございました。