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2020.12.26

熱の移動と水分子を考える その⑰『窓下の熱と水蒸気移動3』 インプラス窓の提案

熱の移動と水分子を考える その⑰『窓下の熱と水蒸気移動3』 インプラス窓の提案
顧問の坪内です。

いつも池本工務店の事業にご支援・ご協力いただきまして、ありがとうございます。


『洗面所の壁にカビが生えました。何故なんだろう?』の続きです。

前回は窓全体のサーモ写真を撮影し概要をお話しましたので、今日はもう少し詳しく観察したいと思います。
撮影の中での各ポイントをM1M2M3・・・・・・と温度を測定します。
その中で

赤色破線楕円 相対湿度100%以上(12℃以下)
   青色破線楕円 相対湿度85%以上(14.5℃以下)

の箇所を探りながら、カビ発生を抑制する方法を探りたいと思います。

1.
 窓際の測定写真

 ① 窓枠はアルミ製サッシ(M1下方の隅温度)
 ② ガラスは単層ガラス(M2ガラス上方の表面温度)
 ③ 外壁はALC(胴縁の厚みは空洞)
 ④ 内壁は石膏ボード+クロス仕上げ(M4上方の表面温度

(実はこの時下地に木胴縁の有無でも温度は変わるのですが)
 ⑤ 移動した収納箱(M3上方の表面温度)
 
⑥ 内壁は石膏ボード+クロス仕上げ(M5中方の表面温度)
 ⑦ 内壁は石膏ボード+クロス仕上げ(M6下方の表面温度)
 ⑧ 洗濯機の表面(M7表面温度)
 
⑨ タオルかけのタオル表面(M8表面温度)

の様に測定されます。

ここで青色破線部に計測された箇所はM1です。
12.7
℃なので湿り空気線図から割り出すと93%程度になります。


実際の測定写真


2.
 床面の測定写真

 
①同様に測定すると露点温度(12℃)以下の箇所は
   ・窓下の巾木位置表面温度 M1
   ・窓下の巾木位置表面温度 M4
  
です。
 ②また湿性カビ発生(相対湿度85%以下)区域は
   ・床より少し上の内壁で石膏ボード+クロス仕上げ下方表面温度 M3
   ・移動した収納箱の下方表面温度 M6
 です。 



床面の測定写真


3.
 内壁と洗濯機の隙間床面写真

ここにもカビが発生していました。
  実際にはこの隙間に縦に細長い収納ボックスが内壁に密着してありました。

  ①測定すると露点温度(12℃)以下の箇所は
   ・外壁と内壁の隅角部の巾木位置表面温度 M1
   ・外壁と内壁の隅角部の巾木位置表面温度 M2
  
です。

 ②また湿性カビ発生(相対湿度85%以下)区域は
   ・床より少し上の内壁で石膏ボード+クロス仕上げ下方表面温度 M3
   ・床より少し上の内壁で石膏ボード+クロス仕上げ中方表面温度 M4
   ・床より少し上の内壁で石膏ボード+クロス仕上げ上方表面温度 M5

  この様に収納箱の裏には結露して、カビの発生し易い箇所となっていたのです。


内壁と洗濯機の隙間の床測定写真


4.
 コールドドラフト現象の解説

次に窓下のコールドドラフト現象をサーモ撮影の分析で確認します。
①左図が前回解説した表面温度の図です。
 ・中ほどの黒い縦ライン(緑色破線部)の温度を分析します。
②その右側に表面温度を示す表現表が有ります。
 ・下の青黒い色の箇所が温度の低い区域です。
 ・中ほどの赤色オレンジ色が常温区域
 ・上の黄色く白っぽい箇所が温度の高い区域です。
③一番右にあるグラフで黒い縦ラインの温度分析を確認します。
 ・コールドドラフト現象の良く分かる図です。
 ・一番上部紫色の濃い箇所はアルミサッシの縦枠です。
 ・アルミサッシの一番下のM3温度は13.1℃です。
 ・同様にその左のアルミサッシの一番下のM7温度は12.8℃です。
 ・窓の位置を観測するとガラスの箇所がオレンジ色でアルミサッシ枠は濃い紫色です。
 ・これはアルミの方がガラスより熱伝導率が高いので、外の冷気が伝わり易くより低温になっているからです。
 ・次に窓の下端木枠の位置は窓より5℃程度暖かくなって18℃ぐらいです。
 ・それから徐々に温度が低くなっています。
 ・内壁の巾木と床面の接する箇所はM4で温度は12.7℃です。
 ・同様にその左の内壁の巾木と床面の接する箇所はM6で温度は12.8℃です。
以上の4地点は14℃以下で相対湿度85%以上の湿性カビ発生区域となります。


コールドドラフト現象測定解説図


『コールドドラフト現象は』窓からの冷気が下降してその下部で滞留し冷所のエリアを造る事を言います。
以上が『洗面所の壁にカビが生えました。何故なんだろう?』のお客様宅を調査した結果です。


5.
 結露発生の抑制は

これまでの事で理論通りに結露が発生し、カビが生育しているのが判ります。
この状態で結露を発生させずカビも発生させない状態を造ることは可能です。
 ①窓からの冷気下降現象(コールドドラフト現象)を無くす。
 ②床の表面温度を上げる。
 ③内壁の表面温度を上げる。
 ④空気中の水蒸気量を減らす。

ここで②と③の提案はお金と時間の掛かる方法です。
そこで、①と②の解決策を取る事となります。

①の提案は二重窓にすること。
②の提案は除湿すること即ち除湿器やエアコンの機械除湿か、除湿剤による化学的除湿
③又は、換気による自然換気です。


この現場では、
二重窓として、LIXILさんの『インプラス窓』の提案と
入浴後は勿論日中でも風呂場の換気扇を作動させ除湿を心掛け、一番離れた箇所からの外気の流入を図るシミュレーション計画を提案しました。

次回は更に「冬季の結露」、「コールドドラフト現象」、「二重窓の提案 『インプラス窓』 を取り付ける」をイラストで示しながらより分かり易く説明したいと思います。

今年は「コロナ禍」の影響で世界中が混乱しています。
100
年前に流行した「スペイン風」も日本では流行の波が4波有り、約45万人の死者を出して、23年も掛かって収束したとか。

下記図は有識者が示した温度・相対湿度の環境の中で
①カビゾーン
②ウイルスゾーン
③快適ゾーン
④乾燥ゾーン
⑤ダニゾーン
を表した目安のものです。

その図の中に日本国土開発㈱ 安部恵子先生の研究された湿性カビが生育し易い(室温25℃、相対湿度95%)を赤い星印で、宮城件医師会の「インフルエンザ発生リスクの高い環境」を青色の星印を付け加えたものです。
この図の中にコロナウイルスの最も適したエリア、不敵なエリアが早く見つかり感染拡大に役立ち、解明出来ればと願っています。


住環境における、ダニ、ウィルス繁殖ゾーン開設図


さて4月からスタートした『イケコウのホームページ』の中で「YouTube『知らんけど講座』の製作」、
「ホームページの『ブログの土曜日担当』の執筆」を行いました。
YouTubeの再生回数はまだまだですが、制作に関して個人的には楽しくやっております。

来年もー「建築技術の知識向上」と「番外編」として雑学を身に着けて行きたいと思います。
もー昭和24年生まれの「年男」で72歳となります。



どうも一一年間お付き合いありがとうございました。
来年もーよろしくお願いします。