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2021.01.23

熱の移動と水分子を考える その⑲『窓下の熱と水蒸気移動5』インプラス窓の提案

顧問の坪内です。

いつも池本工務店の事業にご支援・ご協力いただきまして、ありがとうございます。


『洗面所の壁にカビが生えました。何故なんだろう?』の続きです。
前回からそろそろ本番に入りました。

洗面所の内壁にカビが発生したメカニズムを図で解析します。

この建物は重量鉄骨系外壁ALC張りの住宅です。
ALCは断熱性のある外壁材なので、ALCに直接木胴縁を固定し、内装(石膏ボード+クロス)施工となります。

①下の図のように冬季ガラス
・アルミサッシュを通じて、窓から冷気が進入します。
②窓面より冷気が侵入し、コールドドラフト現象と呼ばれるように冷気が下降します。
壁の空洞部分は質量が無いので、内壁の内外から冷やされ易くなっています。
③これが表面クロスや床面を冷やすのです。
④木胴縁のある箇所と比較して空洞の箇所はALCだけの断熱性のためより冷やされるのです。
⑤このお宅の場合は更に
・床面を冷やした冷気が収納箱と内壁の隙間に入り込み、
・隙間から内壁の隅角部に滞留します。
・洗面所の中央で電気ストーブを付けていますが、
・この隅角部に暖かい空気が対流して来ることはありません。


 カビの生えた説明図 壁体内結露の写真

⑥この空間での相対湿度は65%以下となります。
 ・乾性カビが生え易くなります。
⑦更にこの空間での相対湿度は85%以下となります。
 ・湿性カビが生え易くなります。

そうです。この湿性カビがあのクロスに発生した黒いカビなのです。

次はインプラス窓を設置し、空洞の箇所に発砲系断熱材を付加した、改修後の図です。
①インプラス窓を取り付けるとガラス・アルミサッシュ枠から外気窓から侵入し難くなります。
 ・外の窓から冷気が侵入します。
 ・内のガラスとの間に空気層が出来て
 ・空気の対流を防ぐ事で断熱性が増します。
 ・この窓と窓の巾を広く取ると対流が生じ。
 ・断熱性能が低下します。
②コールドドラフト現象が少なくなり、冷気の下降が減少します。
③表面クロスが冷やされ難くなりカビの発生を抑えます。
④施工後は室内の水蒸気量を少なくする工夫をします。
⑤更に温度差を無くすために、壁の空洞部分に発砲ウレタンを入れます。


解決提案 内容説明図


以上で完成です。
これで今考えられる工夫をしました。
後はカビの発生しない相対湿度の条件を作ってあげることです。
そうです 『通気・換気』の徹底です。

ここでカビの発生に関する興味ある資料が有りますので紹介します。

カビの発生域と結露
異なる相対湿度領域において、カビの種類と発生状態は異なります。
更に条件が整えばカビは発生しなくなります。
下記表はダウ化学発行の技術資料「熱と環境VOL49の抜粋」です。
(阿部恵子  日本国土開発(株):カビと室内空気環境)に書かれております。

下記表は
①細菌類が湿度100%に近くに多く発生
 ・大腸菌、ブドウ状球菌(悪性)
 ・乳酸菌(良性)
②好湿性カビが相対湿度95%以下で発生
 ・すすかび、くものすかび、けかび
③中湿性ガ相対湿度82%以下で発生
 ・こうじかび、あおかび
などとなっています。



相対湿度領域とカビ発生の種類

ここでの室内で一番多くカビの発生する住宅環境の条件は
温度25℃で相対湿度95%のようです。
下記図はカビの発生する条件のセンサーを作り
カビが発生し易い環境を探ったものです。
この等高線外の条件で室内環境を整えてやれば良い訳です。



最もカビの発生し易い温度・相対湿度領域


室内の結露発生の原因である水蒸気は『住まう人』が日常的に発生させるものです。
結露を発生させなくするには、それなりの工夫が必要です。

ユーチューブ『イケコウ』の「知らんけど講座」で教えてくれます。

インプラス窓の提案
イナックスのカタログより
①下図はインプラス窓の取り付け前後のイナックスカタログの拡大です。
(
冬季の室内温度差を赤外線サーモで測定比較をしています)  カタログ P7



夏季の温度差説明図


②下図はインプラス窓の取り付け前後のイナックスカタログの拡大です。
(
夏季の室内温度差を赤外線サーモで測定比較をしています)  カタログ  P11



冬季の温度差説明図


更に、インブラス窓は『日本の最も良い季節の春先と晩秋』にも効果を発揮してくれるのです。

①春先や晩秋の天気の良い日に外窓を閉めて、
 ・内側のインプラス窓を開けることで、
 ・心地良い日差しを室内に取り入れることが出来ます。
②複層ガラスには不可能な効果です。もう少し詳しく説明します。
③複層ガラスで造った窓は外気との遮断を重視して造ったものです。

省エネルギーの考え方は
四季を通じて室内空間温度を一定に保つことを重視して考えられたものです。

④そこでエネルギー消費を抑える為の手段として、
 ・あらゆる電気製品の電力消費の省力化と
 ・快適空間を造るのに最小エネルギー使用を行う設計にあります。

)一方、住居に住まうとは外界との調和にあります。
 ・特に日本の四季の春、秋の快適環境時期に
 ・電力を使用しなくてよい時の快適性の維持は重要です。

⑥春先や晩秋の外気温が低くて、太陽の昇っている季節
 ・複層ガラスの住宅は室内側も寒くて、エアコン等で暖房する必要があります。

⑦インプラス窓付きの住宅なら、
 ・内側のインプラス窓を開けて、太陽の暖かい日差しを室内に取り入れる事が出来るのです。
 ・又、夜になるとインプラス窓を閉めて断熱性を向上させ、
 ・省エネルギーを自分でコントロールすることが出来るのです。

どうでしょうか、ご理解いただけたでしょうか。
ありがとうございます。
次回までもう少し続きます。