2021.05.29
顧問の坪内です。
いつも池本工務店の事業にご支援・ご協力いただきまして、ありがとうございます。
下記図は「錆びた屋根の農家屋」での1階屋根の錆び模様を『放射冷却』の『霜』と『露』の影響ではないかと仮定した解説図です。
そこで『放射冷却』の『霜』と『露』の影響を受ける条件を
①風がほぼ無い夜間(煙突の煙がまっすぐに上昇しているとき)
②上空に雲の少ない晴天の夜(月があれば、月の見える夜)
③大気全体が低温(TVの気象予報で「上空5千メートルに寒気南下」と放映されるとき)
④空気が乾燥して注意報が出るとき(大気中の水蒸気が少ないとき)
⑤新雪が積もったとき(積雪表層に空気が多く含まれるとき)
⑥地面が乾燥しているとき(土壌表層に空気が多く含まれるとき)
⑦斜面よりは平地、平地よりは盆地(冷気が溜まりやすい地形)
⑧大きい湖や海から離れているところ(湖陸風や海陸風の及ばないところ)
と学習しました。
「放射冷却」による降霜の解説図
上記図の中に『放射冷却』の『霜』と『露』の影響で水蒸気が変化する箇所に①②③・・・・・・。の数字で示しました。
2020.09.12 熱の移動と水分子を考える その⑥ 『街並みの輻射熱』のブログで 「水分子の三様態」を学習しました。
水の分子が気体の場合は水蒸気と呼びます。
水の分子が液体の場合は水と呼びます。
水の分子が個体の場合は氷・霜等と呼びます。
気体(水蒸気)が液体になるのを凝縮と言います。
(液体になったものを結露水と言います)
液体が気体(水蒸気)になるのを気化と言います。
固体が液体になるのを融解と言います。
液体が固体になるのを凝固と言います。
気体(水蒸気)が固体になるのを固化と言います。
固体が気体になるのを昇華と言います。
そこでこれらの事を上の図で考えてみますと。
①地表の霜
・気体が固体になるのを固化と言います。
・水蒸気が冷却(固化)されて霜(結霜)となります。
・気体が液体になるのを凝縮と言います。
(液体になったものを結露水と言います)
・水蒸気が冷却(凝縮)されて露となります。
②軒下に忍び寄る冷気
・地表面で冷却された空気は地表を移動して軒下に侵入します。
・冷気は地表面を最下点として積層されていきます。
・軒下に侵入した冷気は暖かい空気を押し上げながら、
・野地板や屋根裏面を冷やします。
③屋根軒先の霜
・屋根裏面を冷やした冷気は屋根材も冷やします。
・ところが屋根表面は天空からの放射冷却により既に強力に冷やされているのです。
・ここで①の地表面での霜と比較して見ましょう。
・地表での霜は地中からの熱(地熱)で温められながら、地表面を冷やしています。
・一方屋根軒先部では屋根材下からも冷やされ、更に屋根表面は放射冷却で冷やしています。
・屋根軒先部の方が霜の付着が多いと分かります。
④室内の暖気
・住宅に人が住んでいれば熱が発生します。
・水蒸気も発生します。
・住んで居なくても地中からの熱もあり、軒下で外気に晒されている場所に比較して熱を帯びています。
・もちろん日中の太陽の熱を蓄熱もしています。
・それらの熱が天井、野地板を経て屋根裏面に移動してきます。
⑤トタン板の重ねの断熱層
・空気は動く空気として対流を起こせば熱を大量に移動させることはできます。
・一方動かぬ空気の熱伝導率は低いので、断熱効果も期待できます。
・屋根材と屋根材に挟まれた空気は動き難いので断熱の効果があるのです。
⑥一般部屋根の霜
・④の暖気で温められた屋根材も放射冷却で天空から冷やされます。
・しかし③の軒先のように霜が沢山付着することはありません。
・そうです。この部位の屋根材は温められており、軒先部の温度より高いのです。
・そこで降霜には時間が掛り、霜の量も少なくなるのです。
⑦タルキの位置(ここでは分かり易く母屋位置)
・次に下地の野地板を支える垂木の位置に注目しましょう。
・この現場では多分、垂木の上に野地板(バラ板)が施工してあると考えられます。
・そして防水性を高めてあるならアスファルトルーフィング22kg(後にアスファルトルーフィング940と改名)が施工してあります。
・建物が40年以上経過しているのであればルーフィングの代わりにアスファルトフェルト14kgが施工しあります。
・ここも一般部の屋根のように室内の暖気で野地板、屋根材が温められます。
・ところが熱が野地板に行く前に蓄熱作用のある木材の垂木が有ります。
・そこで暖気は垂木に吸収されます。
・垂木の無い野地板面と垂木のある野地板面に温度の差が出来、その差は屋根材にも表れます。
・そこで屋根材に付着する霜の量に差が発生するのです。
プログ10月17日から11月28日までに
熱の移動と水分子を考える 『屋根の雪景色と熱と水蒸気移動』
のタイトルで屋根に積雪屋根の雪模様について下記のように書きました。
降雪時の屋根の状態
②下地の構造が分かります。
・下地の構造により断熱性能が変わります。
・室内側から移動する熱の量にも変化が見られ、屋根上に堆積した雪の融け方に変化が見られます。
③垂木(タルキ)の位置が分かります。
・屋根材の下には防水シートがあり、野地板がありそれを支える「垂木」があります。
・通常垂木は500・455・450・360mm等の間隔で施工されます。
・ここでは垂木が断熱材の効果を発揮し、室内から小屋裏に移動した熱をカットする役目をしています。
・従って垂木の位置は雪が融けない状態で屋根の上に残っています。
④このアパートは北側廊下で、室内の境界と北側廊下では雪の融け方が異なります。
・廊下は外気に晒されている建物です。
・従って廊下の天井も冷やされ、その上にある屋根材も温められないので、
屋根の下1/3程度のエリアは雪が融け難くなっているのです。
雪が屋根に降雪する現象と霜が屋根に降霜する現象は屋根上の模様では良く似ています。
雪は空気中の塵に水分子(水蒸気)が凝固する現象で、その個体(雪)が屋根の上に堆積するのです。
霜は屋根近くの水分子(水蒸気)が屋根表面の冷気により凝固して個体(霜)になり堆積する訳です。
次の写真は20数年前外装リフォームを行った現場の屋根写真です。
この建物には小屋裏換気口が有りませんでした。
小屋裏を調査したところ野地板が酷く結露していました。
数日前から屋根を観察し、降霜した朝に写した写真です。
降霜時の屋根の状態
①二階の屋根には既に太陽(日)が当たっています。
②一階北側の屋根には太陽(日)が当たっていません。
③一階西側の屋根にはジョジョに太陽(日)が当たってきています。
④一階・二階の軒天部分には霜が降りています。
(軒天井が外気温に冷やされ、同時に野地板・屋根材が冷やされ、屋根の表面は放射冷却により冷やされた結果、明確に霜が付着しています)
⑤下屋根軒天部の霜が解けている箇所があります。
⑥その下の壁部には壁部から金属製の換気扇が付いています。
⑦この軒天部分が朝餉の準備で、台所の室内が温められ、更に小屋裏・軒天が温められて「霜」が融けた可能性があります。
➇または、小屋裏の換気が悪い為、室内側の熱気により野地板屋根材も温められているため屋根表面は放射冷却により冷やされて「露」が降りた状態かも知れません。
本物件にはリフォーム時、一階二階屋根への換気棟設置と小屋裏天井への断熱材の設置を行いました。
グーグルで覗いてみるとどうやら健全に機能しているように感じられます。
換気棟も設置され健全な屋根と観察される
さて下の写真は同様に通勤途中に路上駐車された自動車に降霜したものです。
建物と同様に車のフロントガラスや屋根に降霜しています。
車を構成している材料は鉄とガラスです。
鉄やガラスは材料として熱伝導率は高く冷気が室内に入り易いのです。
日本の住宅は基本的に木材が多く、鉄やガラスより熱伝導率は低いので熱が伝わるには時間が掛ります。
車のフロントガラスや屋根に降霜するのは住宅の軒天上の屋根と同じ現象で白くなるのです。