2022.05.14
日本料理・天平倶楽部 (元對山楼(たいざんろう)) の会計で頂いたパンフレットに概略が記してありましたので、
参考にして楽しい時間を過ごしました。
俳句と言えば江戸時代は松尾芭蕉の「古池や蛙飛び込む水の音」や
明治時代は正岡子規の「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」でしょうか。
その正岡子規が奈良を訪れたのは明治28年10月末で、
ここに宿泊したのが26日頃、28歳の秋と言われています。
その時詠んだ俳句に「大仏の足元に寝る夜寒かな」(奈良角定にて)があり、
「角定」は奈良の名旅館で後の『對山楼』と言われています。
宿帳には、子規の名前「正岡常規」と残っているとか。
そんないわれの残っている日本料理店「天平倶楽部」で昼食を頂きました。
天平倶楽部 外観 明治7年の角定(パンフレットから)
天平倶楽部入口の直ぐ右に 『子規の庭』 の案内と入口があります。
木戸を開けて自由に出入りできます。
「孔規の庭」の看板
「子規の庭」に誘導されるように雰囲気のある石畳の通路があります。
明治時代の世界に引き込まれていくような配慮でしょうか。
庭への通路
晒竹の塀に「子規と奈良」の経緯が掛れています。
じっくりと読んで 「明治の子規」 に出会うのは少し後にしましょう。
雨で苔生した石段を登ります。
少し前に学んだ「藍藻類」「地衣類」「苔類」が岩にびっしりと付着して、
屋根の上とはまた異なった様相です。
完全に明治時代にタイムスリップしそうなアプローチです。
苔生した階段を上がります
ネットで調べてみると「東京紅団」が 『正岡子規 散歩』 と言う文章で詳しく書いておられます。
読んでみると楽しくなります。
こんな感じで明治時代に入ります
この時は柿が盛(さかん)になっておる時で、奈良にも奈良近辺の村にも柿の林が見えて何ともいえない趣であった。柿などというものは従来詩人にも歌よみにも見離されておるもので、殊に奈良に柿を配合するというような事は思いもよらなかった事である。余はこの新たらしい配合を見つけ出して非常に嬉しかった。或夜夕飯も過ぎて後、宿屋の下女にまだ御所柿は食えまいかというと、もうありますという。余は国を出てから十年ほどの間御所柿を食った事がないので非常に恋しかったから、早速沢山持て来いと命じた。やがて下女は直径一尺五寸もありそうな錦手の大丼鉢に山の如く柿を盛て来た。さすが柿好きの余も驚いた。それから下女は余のために庖丁を取て柿をむいでくれる様子である。余は柿も食いたいのであるがしかし暫しの間は柿をむいている女のややうつむいている顔にほれぼれと見とれていた。この女は年は十六、七位で、色は雪の如く白くて、目鼻立まで申分のないように出来ておる。生れは何処かと聞くと、月か瀬の者だというので余は梅の精霊でもあるまいかと思うた。……
〔『ホトトギス』第四巻第七号 明治34・4・25 二〕」
「柿も旨い、場所もいい。余はうつとりとしてゐるとボーンといふ釣鐘の音が一つ聞こえた。(略)あれはどこの鐘かと聞くと、東大寺の大釣鐘が初夜を打つのであるといふ」。
青色の箇所は子規が暫しの喧騒から救われた境地に入れたひと時かも知れません。
この話から「柿くえば
鐘がなるなり 法隆寺」の俳句が何処で作られたかになるわけです。この句は明治28年11月8日の「海南新聞」に掲載されていますので、この時期に作られたことは間違いありません。ここでは上記に書かれているとおり、東大寺の鐘の音(夜8時)を聞きながら柿を食べています。
そこでこの「角定」では
秋暮るゝ奈良の旅籠や柿の味
の句を詠んだのは確かとされています。
正岡明氏のスケッチ
子規の孫にあたる造園家の正岡明氏が設計された庭のスケッチです。(パンフレットより)
對山楼の跡地 (現天平倶楽部敷地内) に、樹齢百数十年近い下記の古木と句碑を中心とした「子規の庭」をつくります。子規の愛した野の花を植え込み、四季折々の景観が楽しめるとともに、子規をしのびます。
スケッチと同じ場所に立つと樹木が育って、東大寺の屋根の棟の一部しか見られません。
ただ、雨に濡れて苔生した石碑は遠く明治にいざなってくれます。
秋暮るゝ奈良の旅籠や柿の味の句碑
そして百数十年の柿の古木です。
今も元気に「柿好きの子規」に微笑んでおります。
本当はこの様な庭に覆い茂っている柿の木のが好みなだったのかも知れません。
百数十年を経た柿木
散策を終わり帰ろうとする足元に、子規の好きそうな紫色の可愛い花が、
「あれこの花可愛いな、名前は知らんけど」
「知らんの、それは紫欄(しらん)よ。谷村新司の歌っている」
『陽はまた昇るよ』
「えっ、知らんかったなぁ」
そう言えば私ユーチューブで 『知らんけど講座』 をしています。
「知らんかっただろけどね」
登録者は30人ですけど。(笑)
紫欄の花
帰りに投句箱があったので、いつもの調子で。
ありがとう子規の庭踏む蝉しぐれ
を入れておきました。
もう一度、真っ盛りの『夏』に訪れたいものです。
もちろん『秋』にも。