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2022.07.16

住宅の外部環境と小屋裏・内部環境を考える その ㊴ 『 屋根の霜模様 ➉ 』 

顧問の坪内です。

前回は電車における架線への「霜」付着について興味ある条件を知ることが出来ました。
更に調査を進めると農業における「霜」被害も深刻です。

明治大学大学院農学研究科澁谷和樹氏と明治大学登尾浩助氏がまたまた興味ある論文「霜の形態を決定する環境条件として」と題して出されていますので少し拝借して説明します。(下記青字・赤字)

 早春と晩秋において、放射冷却によって過冷却に達した農作物に霜が付着することで、細胞凍結が誘引(植氷)され被害に遭うことを霜害という。

日本における農作物の霜害被害は決して軽微では無く、2014年の霜害による面積当たりの被害額48.7万円/haは、同年の鳥獣害被害と比べて倍以上に大きい(農林水産省,2015)
しかし、被害の軽減を図るための、燃焼法や送風ファンといった防霜対策には、労力やコストが非常に掛かるため、連日連夜、予防的に対策を講じることは現実的ではない。

そのため、霜の発生前に適切適宜な防霜対策を行うための、精度の良い霜害の発生予測が必要とされている。
霜は、結露の凍結または水蒸気から氷への相変化などによって、地物(植物・岩石など)の表面上に生成される氷晶であり、様々な発生過程によって生成される。
そのため、一概に霜と言っても
多様な形態がある。

それらの霜の形態のうち、
(1)
結露が凍結した
水霜(凍露)
(2)
水蒸気が昇華した
白霜()という2つの形態がある。

霜害の対象となるのは主に白霜であり、水霜による被害は少ないと報告されている(田沢, 1947)
従って、霜の形態を考慮することで、霜害予測の精度向上が期待できる。
しかし、霜の形態を判別可能な手法が無かったため、
水霜と白霜の発生条件の特定に至っていない。

そこで、物質によって異なる比誘電率(=80,氷=3.5,空気=1)を測定することで、検知部の接した物質の判別が高精度で可能な、TDR(Time Domain Reflectometry, 時間領域反射)法を用いたTDR霜センサを開発した。
TDR
霜センサは
水霜と白霜の判別が可能であり、このセンサを用いて霜の形態を決定する環境条件の特定を行った。
その結果、絶対湿度が発生する霜の形態を決定していることが分かった。

絶対湿度が3g/m3以上であると結露の発生から水霜が発生し、
絶対湿度が3g/m3以下であると、結露は発生せず水蒸気が昇華して白霜が発生
していた。

また、気温が十分に低温であっても、絶対湿度が2g/m3以下の場合、乾燥し過ぎているために霜が発生しなかった。
従って、絶対湿度が2g/m3以下の場合は霜害ではなく、より作物の被害が重くなりやすい凍害が発生すると考えられた。霜の形態や発生率は周辺環境による絶対湿度の変化に大きな影響を受けていると考えられた。

架線の「霜」付着の研究では相対湿度が重要と結論付けられています。
今回の農業部門では絶対湿度、即ち水分の量が重要とされています。
これらを頭に入れたグラフは次回見てみたいと思います。


今回は2017.02.142017.02.16D邸の屋根模様を見てみます。
まず下記写真 
D邸は2017.02.14日朝63512秒です。
C
邸と同じように、手前の少し低い道路から見上げています。
電線が沢山あり、その向こうには近鉄電車の架線もぶら下がっています。

      D 邸 2017.02.14 遠景


D邸の外観です。
この住宅は中央に窓が3箇所あります。
3
つの窓のシャッターは全て閉まっています。
隣のC邸はシャッターが中央と右側の2つが開いていました。
このシャッターの開閉が屋根野地裏の温度に影響を与えているのではないかと、
考えるのは私だけなのでしょうか。

      D 邸  2017.02.14 外観

この住宅の特徴は水平棟の3箇所に換気棟が設置されている事です。
換気棟が設置されていれば、換気棟からは熱気と湿気が自然と排出されて、
周囲の野地板は乾燥し、温度は低くなります。
ただし換気棟排気口周りは暖気で温められます。
そのような微妙な温度分布がこの写真から読み取れるか
人気が無く、小屋裏の温度分布は少ないのでしょうか。



     D 邸 2017.02.14 屋根模様


次に2017.02.15D邸の屋根模様を見てみます。
まず下記写真 D邸は朝63850秒です。
手前の少し低い道路から見上げています。
電線が沢山あり、その向こうには近鉄電車の架線もぶら下がっています。

      D 邸 2017.02.15 遠景


D邸の外観です。
この住宅は中央に窓が3箇所あります。
3
つの窓のシャッターは全て閉まっています。
隣のC邸はシャッターが中央と右側の2つが開いていました。
昨日も同じ様子でした。
この窓のシャッターの開閉が屋根野地裏の温度に影響を与えているのではないかと、
考えるのは私だけなのでしょうか。

       D 邸 2017.02.15 外観


この住宅の特徴は水平棟の3箇所に換気棟が設置されている事です。
換気棟が設置されていれば、換気棟からは熱気と湿気が自然と排出されて、
周囲の野地板は乾燥し、温度は低くなります。
多分人が生活していれば顕著に表れると思われます。
中央の水平棟の両ケラバ部には「霜」の付着は少ないように見えます。
小屋裏内部には暖気が溜まっているのでしょうか。
一番外側300mm位のケラバ部には「霜」の付着が見られます。
両側落ち棟水平部のケラバ部付近には「霜」の付着が見られます。
両側の閉鎖的な壁の影響で、野地板の温度分布にも影響しているようです。
前日より全体的に「霜」の付着は少ないように見えます。

      D 邸 2017.02.15 屋根模様


次に2017.02.16D邸の屋根模様を見てみます。
まず下記写真 D邸は朝64318秒です。
手前の少し低い道路から見上げています。
電線が沢山あり、その向こうには近鉄電車の架線もぶら下がっています。



      C 邸 2017.02.16 遠景


C
邸の外観です。
この住宅は中央に窓が3箇所あります。
真ん中の窓のシャッターが上がって、開いています。
前日2日間は全ての窓のシャッターが閉まっていました。
このシャッターの開閉が屋根野地裏の温度に影響を与えているのではないかと、
考えるのは私だけなのでしょうか。
それとデーターでは前日2日間と比較すると気温は低いようになっています。

     D 邸 2017.02.16 外観


前日の2日に比較して屋根上の「霜」の付着はかなり多いようです。
最低気温は2017.02.14日が-0.6℃、2017.02.15日が1.6℃、2017.02.16日が-1.6℃です。
この住宅の特徴は水平棟の3箇所に換気棟が設置されている事です。
換気棟が設置されていれば、換気棟からは熱気と湿気が自然と排出されて、
周囲の野地板は乾燥し、温度は低くなります。
この屋根の「霜」の付着具合はC邸とは少し異なるようです。
C
邸は換気棟の設置されている中央部に「霜」の付着が多いように見られました。
このD邸は中央部のタルキ部に「霜」の付着があり、野地板部は少ないようです。
そのような微妙な温度分布がこの写真から読み取れるのです。
全体的に縦ライン即ちタルキ位置ラインが薄っすらと見られます。
両側落ち棟水平部のケラバ部付近には「霜」の付着少し少ないように見られます。
更に両側の閉鎖的な壁の影響で、軒先部の野地板には「霜」の付着が多いようです。
いろいろな条件が野地板等温度分布に影響して「霜」模様を描いています。
   
     D 邸 2017.02.16 屋根模様              C 邸 2017.02.16 屋根模様


文章を並べて表現するとその差があまり感じられなく思われます。
しかしC邸とD邸の屋根を並列に並べて比較すると明確に差が出ます。

次回は「3日間の相対湿度・露点温度等のグラフ」を参考にしてE邸の屋根の着霜を見ていきます。

どうもありがとうございます。