顧問の坪内です。
前回は農業における「霜」被害ついて明治大学大学院農学研究科澁谷和樹氏の興味ある論文を見つけ内容を理解することで貴重なデーターを知る事が出来ました。
後でテーター内容を少し詳しく考えてみます。
さて今回は、近鉄沿線の北側で最後に残っているE邸を中心に気温の特徴と屋根霜模様を観察して見ます。
鉄道のパンタグラフと接する電線への着霜は相対湿度87%以上で電線が露点温度以下になった時から、始まるとされていました。鉄道総研研究の調査は岐阜の中津川市から信州の気候を調査されたものでした。
下記数値は奈良の気象数値で、絶対湿度以外は奈良気象台の発表している数値です。
絶対湿度(気圧が関わりますので補正する必要があります。)は私が計算したものです。
多分間違っていないとは思いますが。
ではここでの検証はどうでしょうか。
下記は2017.02.13日18時~14日8時までの気温・露点温度・絶対湿度・相対湿度・風速を表とグラフにしたものです。
ここで相対湿度を見ると、
13日22時に相対湿度が87%になっています。
それから朝8時まで、92・93・95・96・・・・・・・と87%以上を保っています。
気温は0.2℃から-1・・・・・・0.2℃とほぼ一定です。
その時の露点温度は-2℃・・・・・・-1とほぼ一定です。
風速も1.4m/s~02.m/sとあまり強くありません。
という事は少なくともこの条件では13日の22時あたりからは
近鉄電車のパンタグラフに当たる電線には着霜していたと思われます。
そして別の条件を見ると、
一般的に言われている気温が4℃以下の時には霜が降りる時間なので
それは13日の18時からと言えます。
更に、農作業からの考え方では
絶対湿度が3g/m3以上であると結露の発生から水霜が発生し、
絶対湿度が3g/m3以下であると、結露は発生せず水蒸気が昇華して白霜が発生しているとしますので。
この日の絶対湿度を計算すると
13日18時は4.3g/m3で、14日1時は4.1g/m3となり3時には4.3g/m3です。
即ち絶対湿度が3g/m3以上であり湿度が高いので、
結露が発生して霜が着いて「水霜」が発生していると思われます。
もう少し論文の中身をチェックして見ます(青字・赤字は澁谷和樹氏の論文です。)
既存の凍霜害予測モデルでは、凍霜害の発生条件として「最低気温が4℃以下」、「葉温が3 時間以上0℃以下」など気温のみで定義されているが、霜が付着することで作物の細胞内凍結を誘引するため、降霜があることで約0.8℃早く凍結が起こることが知られており(酒井, 1995)、降霜の有無を考慮することで予測モデルの精度をより高められると考えられる。そこで本研究では、さらに降霜が葉と同様に発生し易いようPCB(ポリ塩化ビフェニル)製の熱容量の小さいシート状のTDR 霜露センサを用いての観測及び、熱収支式を使用してTDR霜露センサの実用性の実証を行った。
先ず結露が発生し、その結露水が凍結して水霜(凍露)に移行したと思われる考え方です。
農業の考え方は植物の葉への着霜の有無です。
TDR(Time Domain
Reflectometry, 時間領域反射)法により、センサ-上の比誘電率を測定した。
空気の比誘電率が1、水の比誘電率が80、氷の比誘電率が3.5 であることから、センサ-上についた物質の区別が可能である。
本研究では、降霜が葉と同様に発生し易いようPCB(ポリ塩化ビフェニル)製の熱容量の小さいシート状の霜露センサ-(ケット科学研究所製)を使用した。
実線のグラフに比誘電率、2 つの点線のグラフに気温とセンサー上の温度をそれぞれ示した。
12:00 から18:00 にかけて比誘電率は低い値を推移しており、これは空気を示しており、検知部に何も付着していないことを示している。
18:00 に着霜によって比誘電率が高くなった。
霜は18:00 から翌朝10:00 にかけて降霜し続け、比誘電率の値も霜の増加に伴って増加し続けた。
温度上昇により11:00 には霜が解けた。
水の比誘電率は80 であり、氷の3.5 に比べ高いため、それにより比誘電率は一時的に急激に上昇した。
その後、解けた霜によって生じた水もすぐまた蒸発したため、比誘電率は降霜前の値まで低下し、その後は安定した。
熱容量の小さいシート状のTDR 霜露センサ-を用いることにより、検知部に着霜し易くなり、より明確に着霜を捉えることができた。

上記はその時の論文に添付されているグラフです。
非常に理解易いグラフですが学会発表用の白黒グラフなので少し工夫したいなと思うところです。
次に前回説明した鉄道総研研究の霜着霜のグラフを再度見てみます。
カラーの色分けで更に分かり易いグラフとなっています。

本当は、澁谷和樹氏のグラフに色を付けて説明したいのですが、論文発表のグラフを無断では改ざんはできません。
可能であれば、下記添付図を澁谷和樹氏のグラフに被せて頂ければより分かり易くなると思います。
2つのデーターを見ると電車用の電線のセンサーも植物の葉のセンサーも気温よりは少し低い温度となっています。
現実は両方とも空中に浮いています。
周囲の条件(空気中)は気温ですので、高さは異なりますが、電線も葉もほぼ同条件で放射冷気冷却の影響を受ける訳です。出来れば屋根表面と気温の関係のテーターを比較したいものです。
今回は2017.02.14のE邸の屋根模様を見てみます。
まず下記写真 E 邸は朝6時37分34秒です。
C、D邸とは異なり手前の道路は少し高くなり、丁度良い目線からの観察となります。
従って、邪魔になっていた電線は住宅の外壁ラインとなり、あまり気にならなくなりました。
その手前の土手の枯草の葉にも霜が降りています。
さらに歩いていると、左側に写真の様な屋根の住宅があります。
このシリーズのスタートに「これぞ「屋根降霜の見本」と呼びたくなるような住宅です。」と表現した E邸 住宅です。

E 邸 2017.02.14 遠景
少し復習してみます。
屋根の水平棟に 1P (910mm)の換気棟が設置されています。
左右の端のケラハ部は300mmの出でケラバ天井が付いています。
下方の軒先は600mm程度の出で軒天井が付いています・
そして屋根面には横に小さなラインが多く流れるように付いています。
又、縦には少し太く910mmピッチで棟から軒先まで付いています。
この縦のラインは建築の専門的に表せばタルキと言われる箇所です。
屋根材が施工されている野地板と呼ばれる下地材を固定する部材です。
通常はタルキと言われる部材は455~450mmピッチに有るのですが、
このお家は910mmピッチに有るので、何故なのか少し疑問の残るところです。
さて白い色の箇所の観察に戻りましょう。

E 邸 2017.02.14 外観
2017.02.14日の気象データーを見てみましょう。
気温は前日18時が3.8℃で徐々に下がり、朝1~2時にー2℃
相対湿度は前日22時より87%以上で朝2時に96%と上がり
絶対湿度は4.2~4.4g/m3の間
風速はほぼ1m/s前後
露点温度はほぼー2℃
などの条件を調べるとここは「水霜」が発生したことが得られます。

2014.02.14 日の気象データ
屋根の水平棟の換気棟部での霜付着に著しい変化は見られません。
左右の端のケラハの出部の霜の付着はケラバ天からの冷気の影響が大きく関わっているようです。
下方の軒先の出部の霜の付着は軒天からの冷気の影響が大きく関わっているようです。
そして屋根面には横にカラーベスト重ね部の小さなラインが多く流れるように付いています。
又、縦には少し太くタルキの箇所に棟から軒先までライン付いています。
よく見ると455mmピッチに何やら薄くラインがあるように見えます。
この理由は次回詳しくお話します。
暫らくはこの屋根の素晴らしい「霜模様」をご覧ください。

E 邸 2017.02.14 霜模様
次回も「残り2日間の相対湿度・露点温度等のグラフ」を参考にしてE邸の屋根の着霜を見ていきます。
どうもありがとうございます。