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2023.02.11

建物の外部被害に関わる資料 その 9 『 竜巻 ⑨ 』

顧問の坪内です。
次に⑦黄色銅板屋根
です。
下記の写真では左側一番上です。
何となく軒先が飛散しているように見えます。
もう少し他の写真で詳しく見てみましょう。

    2009年毎日新聞の報道写真  ①


下記の写真は東側から見たものです。
建物は在来木造2階建て住宅です。
屋根材は全て銅板葺きです。

被害箇所は2階屋根の南側は軒先から半分と
北側が軒先から半分です。
南側屋根は南西部ケラバ角を中心に
扇状に捲れているようにも見えます。
南側軒先部は全て捲れていますが、
西側ケラバ部は流さ2/3位の位置まで捲れています。
そして捲れ始めの西側から
幾らかの銅板屋根材とアスファルトルーアィングが残っています。
東側のケラバ部からはその一部が屋根から垂れています。

一方北側屋根は軒先から丁度半分位捲れています。
写真上端(西端)に少しアスファルトルーフィングの捲れた跡はありますが、
ほぼ横一列の状態で綺麗に捲れているようです。

南側屋根と北側屋根の野地板の経年変化を見ると、
北側の野地板が赤っぽい色に見えます。
そして何本か幅広く白っぽい筋が横に見えます。
ほぼ均等の間隔のようです
一方南側の野地板の色はほぼ均一な色で、
何本かの黒い筋が縦に見えます。
➂オレンジ楕円部石綿スレート(住宅平板スレート)瓦屋根「カラーベストコロニアル」の住宅
とよく似た現象がアスファルトルーフィングと野地板に表れているようです。

そして水平棟の位置です。
水平棟は殆ど無傷です。
中心部にテビアンテナの設置位置が黒くなっています。
転倒して折れた形跡はありません。
カラーベストや瓦の場合はこの箇所には地衣類付着が見られますが。

更に1階の屋根は西側北面のケラバ部です。
水平棟の少し下部から屋根の半分位捲れています。
ケラバ部の端から均一の力で起こした様に捲れています。

    2009年毎日新聞の報道写真  ②


次にもう少し南から見てみましょう。
南側の様子が良く分かります。
アスファルトルーアィングの接合重ね部が
太陽熱で野地板と溶着しています。
更に幾らかの箇所でもアスファルトルーフィングと野地板が
溶着し野地板上に黒い跡が残っています。
水平棟は何の被害もないように見えます。
下屋根の軒先、壁当たりにも何ら被害が無いように見えます。
テレビアンテナも少し前に外されて有線にされたのでしょうか。

    2009年毎日新聞の報道写真  ③


それではこの銅板屋は何故飛散したのでしょうか。
平成16年4月1日に「社団法人 日本銅センター」が
『改定 銅板屋根構法マニュアル』を出されています。
分かり易い解説なので一部をお借りして検証してみましょう。
今回の竜巻事故の検証から竜巻は
台風とは比較できないほど複雑で、
局所的な風が吹いていることが分かりました。
それに比較して台風は地域や高さを規定すれば
大体の力が予想されます。
従って、平成19年に告示され、2000年から実施された
建築基準法の風荷重規定計算により
明確な数字を把握できるようになりました。
そこで銅板屋根の軒先の納まりを参考にして見ますと
下記の様な図になります。
下地は①鼻隠し ②垂木 ③野地板(耐水合板)で構成されています。
それから防水を④アスファルトルーフィング940で行います。
⑤軒先唐草を➇銅釘(又はステンレス釘)で固定します。
⑥銅板一文字本体を⑦吊り子を使用して➇釘で固定します。
台風時には軒先部に吹上の風で赤色矢印の上方向に荷重が掛かり
軒先(一文字本体)部が浮き上がります。
一枚浮き上がれば次から次へと連鎖して、捲れて行きます。
2階の軒先部には被害があります。
しかし通常は軒先には樋が付いていますので、
この樋が風を受け少しの邪魔をします。
風の強さにもよりますが、
風の方向、付属物の大小や有無により
被害の大きさが変わります。

     銅板葺きの軒先納まり図



次にケラバ部の納まり図です。
基本納まり図は軒先部と同じです。
1つ前の写真は2階左側のケラバ部がその状態で止まっています。
これはこの部分で、留め付け吊り子と釘が、
有効に効いているのではと思われます。
赤色矢印の上方向に荷重が掛かり
ケラバ部(一文字本体)が横から浮き上がります。

金属系の屋根材の納まりの基本はほぼ同じです。
軒先やケラバの納まりは工夫により色々考えられますが、
仕事のスピードを考えると、本体平面を(頭から)釘で固定し
シーリングをする現場が近年増えています。
経年でシーリングが劣化するとその箇所から雨水が侵入します。
台風時にケラバ部の被害が多いのは
このような納まりが原因のものがあります。

      銅板葺きのケラバ納まり図



そして一般部の納まりです。
銅板一文字本体の馳を吊り子と呼ばれる金物破片(本体)で固定します。
(はぜ)は、2枚の金属板の端を折り曲げ、
引っ掛け合わせて板金独特の接合部の継手を
折り曲げて継ぐ箇所の名称です。
または「小はぜ」とも言い、はぜを利用して2枚の板を継ぐことを
「はぜ継ぎ」、「小はぜ掛け」とも言うらしいです。
私は板金屋さんではありませんので、より詳細な専門用語は分かりません。
私が建築に関わる会社に入社したのが昭和47(1972)の今から50年程前です。
建築基準法が1950年に制定されてから22年経過した時です。

当時の風に対する考え方は p = C×q  と q = 60h を知っていれば良かったのです。
ここで p は風圧力 で C は風力係数、q は速度圧そして h は高さです。
そこで簡単にここでの力を計算してみますと
一般的に風荷重は分布荷重とされ、面に対して掛かる荷重とされます。
下記図では
一文字本体の半分から次の本体の半分までの分布荷重が
中心の釘に掛かるものと考えます。(この時吊り子とはぜは少しずれた位置にありますが。)
一文字の葺き足が150mm × 吊り子のピッチが同じく 150mm  とすると
1
本の釘が受け持つ面積は 0.025 m2 となります。
即ち1m2当たり約45本の釘で固定する事となります。
ここで、この高さを木造2階の屋根の軒先部とケラバ部を約8mとしますと
軒先部とケラバ部に掛かる速度圧は 608 = 169.71 × 1.5 =254.56 (kgf/m2)
ここでは軒先部とケラバ部は風力係数を 1.5 倍とします。
254.56
 ÷ 45 ()= 5.66 (kgf)
となり、釘1本当たり約6 kgf あれば良い事になり、現行では 55.43N/本 です。

      銅板葺きの一般部納まり図


などと昔を思い出しながらこの銅板被害の住宅の写真を眺めています。
因みに私の扱った屋根材は当時、一般住宅用として販売していましたので、
1971
年の施工令改正時の q = 120 4.h の使用は非住宅として少し後になります。
今までの屋根は全て被害直後の屋根として観察しています。
館林の竜巻被害写真をあと少しチェックしてみます。

どうもありがとうございます。