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2023.04.22

建物の外部被害に関わる資料 その 16 『 台風 ① 』

顧問の坪内です。

藤田(F)スケールとは
竜巻などの激しい突風をもたらす現象は水平規模が小さく、
(
地域が限定され狭い範囲で発生する)既存の風速計から
風速の実測値を得ることは困難です。
このため、先に学びましたように1971年にシカゴ大学の藤田哲也博士により、
竜巻やダウンバーストなどの突風により発生した被害の状況から
風速を大まかに推定する藤田スケール(Fスケール)が考案されました。
被害が大きいほどFの値が大きく、風速が大きかったことを示します。
日本ではこれまでF4以上の竜巻は観測されていません。
一方台風は被害範囲が広く、多くの観測所で
気象データーを取得し、連携して情報を共有することが出来ます。

竜巻の強さは、6段階に区分されていています。
(藤田スケール)、国内で観測された最大のスケールは下から4番目となり、
その風速は毎秒7090m(時速およそ250330㎞)になります。
竜巻による被害は幅数十
数百m、長さ数kmの範囲に集中しますが、
場合によって数十kmに達することもあります。
下記はFスケールの表です。

          藤田(F)スケール


上記表は小さくて分かり辛いので文字を大きくして下に表します。

F0 1732m/s  (15秒間の平均)
・ テレビのアンテナなどの弱い構造物が倒れる。
・ 小枝が折れ、根の浅い木が傾くことがある。

・ 非住家が壊れるかもしれない。

F1
 3349m/s (10秒間の平均)
・ 屋根瓦が飛び、ガラス窓が割れる。
・ ビニールハウスの被害甚大。
・ 根の弱い木は倒れ、強い木は幹が折れたりする。
・ 走っている自動車が横風を受けると、道から吹き落とされる。

F2
 5069m/s (7秒間の平均)
・ 住家の屋根がはぎとられ、弱い非住家は倒壊する。
・ 大木が倒れたり、ねじ切られる。
・ 自動車が道から吹き飛ばされ、汽車が脱線することがある。

F3
 7092m/s (5秒間の平均)
・ 壁が押し倒され住家が倒壊する。
・ 非住家はバラバラになって飛散し、鉄骨づくりでもつぶれる。
・ 汽車は転覆し、自動車はもち上げられて飛ばされる。
・ 森林の大木でも、大半折れるか倒れるかし、引き抜かれることもある。

F4
 93116m/s (4秒間の平均)
・ 住家がバラバラになって辺りに飛散し、弱い非住家は跡形なく吹き飛ばされてしまう。
・ 鉄骨づくりでもペシャンコ。列車が吹き飛ばされ、自動車は何十メートルも空中飛行する。
・ 1トン以上ある物体が降ってきて、危険この上もない。

F5
 117142m/s (3秒間の平均)
・ 住家は跡形もなく吹き飛ばされるし、立木の皮がはぎとられてしまったりする。
・ 自動車、列車などがもち上げられて飛行し、とんでもないところまで飛ばされる。
・ 数トンもある物体がどこからともなく降ってくる。


この様な表を作成されたのが1971年で私が風に関わる1972年の1年前です。
それから40数年(2016)して日本版改良藤田スケールが出来て
JEF
スケールとして、今日採用されているのです。
JEF
スケールは次の機会に紹介します。


さて1950年の建築基準法における風の話です。
『建築物の強風災害 -100 年の教訓-』の題で 
「神奈川大学 大熊武司先生」の論文が我々建築専門家に分かり易く解説してあります。
その中の一部を抜粋して学びたいとおもいます。
(次の青色太字文章です)
以下、風災害に限って、この約100年の状況を大掴みで振り返ってみる。
 (1)
我が国初の風荷重規定 192811月、非常に簡単なものではあるが、
我が国初の耐風構造に関する規則が
警視庁令第27条(強度計算に適用する風圧力)として発布された。
もっとも、風圧力についての規定の議論はそれ以前にもあった。
建築学会が付託されて作成した東京市建築条例案 (1913年)による風圧力の規定である。
この条例案は実施されることなく終わったが、

市街地建築物法(1919年、細則は1920年)に引継がれた。
ただし、風圧力・地震力について の規定は削除された。
この一連の流れに関連して筆者は、
東京市建築条例案における風圧力の規定値が、
警視 庁令の値の約2倍(建築物で219kgf/m2、自立煙突で244kgf/m2)で
あったということを指摘しておきたい。
短期間の間になぜそのように大きくかわったのか。
その理由について筆者はよく知らないが、
風圧力についての認識が世界的に大きく変わったことが関係しているものと推察される。
すなわち、航空機の研究のために1890年頃から風洞が世界的に建設されるようになって
航空流体力学が著しく進歩し、空気力評価について大きな影響を与えてきた
ニュートンの空気抵抗理論が不合理であることが判明したのである。

因に、建築物についての我が国初の風洞実験は、
恐らく1934年の警視庁技師池口によるものである。

警視庁令第27条(強度計算に適用する風圧力)
建築物の高さ 風圧力 20 尺以下 20 尺を越ゆるもの
 50
尺を越ゆる煙突等 75kgf/m2 以上 100kgf/m2 以上 100kgf/m2 以上
 
室戸台風 1934年の室戸台風来襲に先立つ19307月、
九州地方は日本記録第3位(当時)の猛烈な台風に襲われ、
建築物は甚大な被害を被った。
このため、東京工業大学、東京大学は大学 命で合同調査団を派遣したが、
その調査方法、報告書のスタイルは室戸台風の際に大いに生かされ、
その後の被害調査方法の原形となった。

なお、被害の重大さに鑑がみ、報告書の付録に耐風対策法が
「木造家屋新築及び修理に関する耐風構造上の注意書」として提言された。

 
室戸台風は我が国耐風設計法の近代化の原点ともいうべき事象で、
911hPaという極めて 低い中心気圧を維持して、1934912日未明、室戸岬に上陸した。
この台風は正午には 新潟に達したが、その間、
関西地方は京阪神地帯を中心に未曾有の風水害を受けた。


この 台風災害については多くの研究者や行政担当者によって徹底的に調査・分析され、
当時進められていた海外における建築物についての
風洞実験テーターの収集活動と相俟って、耐風 設計法の見直しが急速に進んだ。
すなわち、前項で述べたニュートン理論による空気力評価の見直しが我が国でも行われ、
設計用風圧力の評価に今日流の「速度圧」、「風力係数」の概念が導入された。
それとともに風洞実験も活発に行われるようになり、
1941
12月に日本建築学会から公表された
 
「鉄骨構造計算規準(案)」の第306条「風圧力」に反映された。

この内容は、数値は若干異なるが、
現行の建築基準法施行令第87条「風圧力」とほぼ同じ考え方のものになって いる。

さて、室戸台風の気圧については当時の単位は我々が若い時から使用したmb であり、 hPa ではありません。
今日出回る若い論文には殆どが hPa で書かれています。
mb
は使用されていないので、何となく読んでいても「バット」頭に浮かびません。
単位だけが異なるのですが。
そこで室戸台風の事を書かれている古い文章を探して見ると
廣瀬 清 氏 の『颱風時高山岳の風速と風害』の話がありました。
昭和109月に書かれたものです。
広瀬潔氏は三井物産の関係者で、
日本山岳会会員として山岳気象学の先駆者でもあり富士山測候所に対して尽力された方の様です。


   颱風時高山岳の風速と風害の表紙



212時台風はいよいよ四国足摺岬南方海上より土佐湾に入り、450分ころ室戸測候所西方約16キロの海上を通過して奈半利町付近に上陸した。その際室戸測候所に置いては510『気圧684ミリ』 という世界最低記録が観測せられ風速実に45メートルに上がったのである。気圧は水銀柱で684ミリバールと言われています。

今各地最大風速(20分間平均)の主要なものを上げると前記室戸45.0メートル、徳島36.7メートル、大阪40.0メートル以上、京都30.5メートル(30分間平均)、彦根31.2メートル、名古屋32.9メートルで、瞬間最大風速は60メートル以上、大阪60メートル、京都42メートルに上がった。 とあるのです。

そうです。建築界で言われている気圧と瞬間最大風速の数値が異なるのです。

 
                   内容文の一部抜粋 


冊子の裏の方には参考文献として、「中央気象室 室戸台風調査報告 103月」とあります。

       参考文献出典の抜粋


室戸台風について、気象庁関係者著書の記録数値と建築関係の指導数値の出典が微妙に異なっています。
各々の事情により、数値が上手く丸めて使用されているような。
どうなっているのか知りたいところです。
今日はこの辺りで。

ありがとうございます。