ブログBlog

2023.06.10

建物の外部被害に関わる資料 その 19 『 台風 ④ 』

顧問の坪内です。

室戸岬や日本の気象について、気象学者の近藤純正(東北大学名誉教授)先生が
数々の著書を書かれていますので、これらの文献を参考にして
室戸台風(昭和9年(1934921日午前5時上陸時の記録値を探ります。
因みに何度も出てきますが、建築界での数字記録値
最低気圧911 hPa
最大瞬間風速63m/s
観測時の風速計の高さ 15m
です。

近藤氏の出身は高知県なので、特に室戸岬については拘りが有るように思えます。
室戸岬は1934年(昭和9年)921日に上陸した「室戸台風」や
1961
年(昭和36年)916日に上陸した第2室戸台風」で知られています。
私は78年前に一度訪れたことがあります。
室戸岬の特徴は高知県東部にあり
(1)
長い間の自然環境がほとんど変化していない、
(2)
岬の先端なので、風雨が強い、
(3)
測候所南側全面が太平洋に面しているので気温変化の幅が小さい、
(4)
日本列島の中では緯度が低く、北からの寒気団の低下が少なくて冬日が少ない、
(5)
中国山脈と四国山脈により冬季の寒気が遮られているので降雪日が少ないことです。

        室戸岬測候所(近藤純正HPより)


日本の気象観測所のほとんどは、周辺が都市化されて
都市独特の気候が顕著に表れるようになりました。
室戸岬観測所は昔から周辺の環境がほとんど変わらず、
広い地域を代表する気象を観測できる場所です。
地球温暖化など地球規模の気候変化を観測できる
数少ない観測所の一つであると言われています。
このような観測所は日本に現在3か所
(北海道寿都、岩手県宮古、高知県室戸岬)しか残っていなくて、
この3か所のうち、室戸岬は最良の環境にあると思われるのです。
都市の気象台 (高知、徳島、大阪、東京)において
30
年間の平均気温が過去60年間に1以上も上昇したのに
比較して、室戸岬ではわずか0.5℃しか上昇していません。
この0.5℃は地球規模で生じている気候変化
(地球温暖化量)を表す値と思われます。
地球温暖化は世界中の大きな問題になっており、
正確な値を知ることが重要となっています。
その目的のために、周辺の環境が悪化しないように、
室戸岬観測所を大事に守っていかねばならないと
近藤純正氏は特に提言されています(気象庁資料から作成)

    室戸岬・高知・徳島・大阪・東京の30年間の気温差


室戸岬は高知県東部、太平洋に向かって突き出た岬で、西側に土佐湾、
東側に紀伊水道、南側には暖流「黒潮」が流れています。
遥か南海上で発生した台風は最盛期の勢力を保ったまま襲来します。
その為ここ室戸岬は古くから台風銀座と呼ばれています。
前線や低気圧が近くを通る頻度も高く、
強雨が斜めから降ってくるように感じるところです。
室戸岬観測所(旧室戸岬測候所、現在は無人となり室戸岬特別地域気象観測所と改称)は、
北緯3315.1分、東経13410.6分、標高185mにあります。
風速計の地上からの高さは41.8でしたが、
風速計のみ2006年に室戸岬灯台の北側、
標高約150mの場所に建つ鉄塔の地上21.8の高さに移設されたようです。

灯台は観測所の南南西方向に約580m離れています。
風速計の移設により、 2007年以後の年平均風速は
従来の値の86になったと言われています。
その室戸台風は
1934
年(昭和9年)921日午前5時ころに室戸岬付近に上陸した台風で、
西日本を中心に大きな災害がもたらされました。
死者・行方不明3,036人、負傷者14,994人、被害住宅92,740戸、被害船舶27,594隻です。
室戸岬上陸時の
中心気圧は911.6ヘクトパスカル(ミリバール)であり、
戦前の日本本土に上陸した台風の中で
上陸時の中心気圧が最も低い台風と言われています。
室戸岬では
最大瞬間風速60m/sを記録したのち器械が破損、
正確な数値は不明であるらしいです。
室戸岬は本土における台風観測の最前線、
「台風銀座」として注目されることになったようです。

そして第2室戸台風は
1961
年(昭和36年)916日午前9時過ぎに室戸岬西方に上陸し、
大阪湾沿岸に大きな被害を及ぼしました。
被害は死者・不明202人、負傷4,972人、住宅499,444戸、船舶2,540隻もあり。
上陸時、
中心気圧925ヘクトパスカル、
最大風速66.7m/s
最大瞬間風 速84.5m/s
以上の新記録を観測しました。
ただし、この記録は その後、1966年の第2宮古島台風にともなう
最大瞬間風速85.3m/sによって更新されました。

ここで日本国内の最低気圧を気象庁の資料から探ってみます。(2023.06.06気象庁のHP資料)
以前にも日本の気候区分を学びましたが
日本は北から南()まで非常に広く、特に南の島々は台風の影響も受けやすいので
緯度の低い地域の気圧観測はおのずと沖縄・鹿児島周辺の島となります。
ここではやはり沖永良部島の907.3hPa197799日に観察されています。
室戸台風の911.6hPa3位となっています。

               国内最低気圧ランキング


そして1951年以降の日本本土上陸時の台風の最低気圧は下記のようになっています。
やはり、島と本土では気圧も異なることが分かります。
ここでも第二室戸台風が925hPa1位となっています。


    台風上陸時最低気圧ランキング


最大風速の歴代全国ランキング(気象庁資料から作成)
. 富士山 72.5 194245
. 室戸岬 69.8 1965910日 昭40年台風23
. 室戸岬 66.7 1961916日 第2室戸台風

. 宮古島 60.8 196595日第2 宮古島台風
. 雲仙岳 60.0 1942827日 台風
室戸岬では第二室戸台風の後にも昭和40年に台風が来て最大風速が更新されたようです。

     最大風速の歴代ランキング


最大瞬間風速の歴代全国ランキング(気象庁資料から作成)
. 富士山 91.0  1966925日 
. 宮古島 85.3  196695日 第2宮古島台風
. 室戸岬 84.5  1961916日 第2室戸台風
. 宮古島 79.8  1968922日 第3宮古島台風
. 名瀬  78.9  1970813日 昭和45年台風9

    

      最大瞬間風速の歴代ランキング


(※1)風速は観測所ごとに風速計の地上からの高度が異なり、完全な比較はできないようです。
(※2)風速計の種類と設置高度は年代によって変更されているので厳密な比較はできないようです。
(※3)室戸岬観測所における風速計の地上からの高度は、この表に示された平年値が統計され期間には41.8mであったが、2006年に風速計のみ室戸岬灯台の北側の鉄塔(標高161m)の地上からの高さ21.8mに移設され、年平均風速は86%に弱く観測されるようになりました。年平均風速の平年値は7.7m/s2007年以後の年平均風速は約6.6m/sとなります。

ここで近藤氏は風速計の高さは2006年に低くされて
21.8mであったとされています。
さて
建築界での数字記録値最低気圧911 hPa、最大瞬間風速63m/s、観測時の風速計の高さ 15mの落としどころは如何でしょうか。

今日はこの辺りで。


どうもありがとうございました。