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2023.06.24

建物の外部被害に関わる資料 その 21 『 台風 ⑥ 』

顧問の坪内です。

建築物の台風被害を起こさない事で、
少し知識を広げる学習をしています。
現在の建築界の風指針である「建築学会・荷重指針」
の指導書関係
で「室戸台風」の風に関する数字記録値
最低気圧911 hPa
最大瞬間風速63m/s
観測時の風速計の高さ 15m

だという事を色々な事象の論文や書籍からも学びました。
「室戸台風」は今から90年前の昭和の初めの事なので、
諸々の事情から正確な数値を知ることは難しいと言うことが分かりました。

「室戸台風」は1934年に世界最低気圧の台風であると同時に
大阪を中心とした関西・中国地方に甚大な人・建物等の被害をもたらしたことでも有名です。

特に大阪では多くの木造校舎が飛散破壊され、四天王寺の五重塔が倒壊したことでも有名です。

さて、これらの数値が正しいのか、
なぜそのようなことが起こっているのかを調べるうちに
建築業界以外にも風の力から防ぐ事業を生業にしている人たちの間にも
同様な意見があることがわかりました。


      東海した四天王寺(毎日新聞社出典供)


構造物の風荷重の規定において,
設計士の風速の数字決定は
最も重要な作業の一つです。

この基本風速は全国の気象官署での年最大風速記録を
地表面粗度,地形,そして測器の特性を数値検討しながら決定し,
 
一定の再現期間の風速として決定してあります。
従来の考え方は最大瞬間風速と同じレベルの血からは建物の高さで決めています。

現在日本国内では各分野ごとに基本風速のマップが異なって作成されています。
しかし,これらの分野ごとの基本風速マップは作成された時期や評価手法などの違いにより,
同じ気象官署の風観測資料を用いているにも関わらず,
今の時点では異なる分布となっています。
どういう事なのかを考えて見るとなるほどとなる訳ですが。
下記写真も「室戸台風」の瀬田川での列車転覆事故の写真です。

瀬田川では列車が転覆した(日本国有鉄・吹田出典)


このような問題を議論し,
基本風速マップの作成に必要な各分野共通な土台を作るため
各学会の有志で強風マップ研究会を申請し,
2000
12月から活動を開始されています。

石原 孟・日比一喜・加藤央之・大竹和夫・松井正宏氏による共著論文
「日本各地の年最大風速データベースの構築と測器補正」に書かれていますので、
内容を少しかみ砕いて紹介します。
この中で

実際の風が事業に関わる分野としては
研究会ではまず建築関係,
土木(道路橋)関係,
電気送電施設関連の資料の比較などを行われて,

各々に独立して風の力を表現していました。
それらの数値の出どころや使用実績を洗い出して
共通の資料を作成するのが目的とされています。
そして各分野における基本風速マップの作成過程を明らかにしています。