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2023.07.29

建物の外部被害に関わる資料 その 23 『 速度圧 ① 』

顧問の坪内です。
風の速度は圧力に変換され、建物に影響を与えるので、
それがどの様に建物に作用するかを教えられたのが今から50年前、
昭和47(1972)です。
私はその年の7月に水の都大阪に転勤になるのです。
転勤を拝命した時、故郷島根江津の「江の川」が水害で氾濫し、堤防が決壊した為、
川の畔にあった実家は、隣近所20軒ばかり流出しました。
下の写真は現在の「江の川」で、
赤色矢印の箇所が実家のあった場所です。
現在は改修されて堤防の一部になっています。

   昭和47年氾濫した江の川の現在  


建築研究所の喜々津仁密氏が「建築物の台風被害の軽減に資する基準の変遷」の論文に時系列の表を作成されていますので私の風との関わりの歴史の1ページに拝借させて頂きます。
一覧にしてあるのは下記のように読みづらいので
別に2枚に分けて使わせて頂きます。


台風と建築基準の変遷の全体(喜々津仁密氏記)


以前にもお話しましたように建築界の風荷重では「室戸台風」の観測数値が基準になっています。
この論文でもその内容を順序良く表現されています。まず
「風荷重に係る基準の変遷」の中に『従来の風荷重』の項があります。
昭和9(1934)9月に高知県室戸岬に上陸した超大型台風は、四国地方から東北地方に至る広範囲に甚大な
被害をもたらした。この台風は一般に室戸台風と呼ばれており、室戸測候所の地上高さ15mの観測鉄塔上で、最大風速45m/s、最大瞬間風速63m/sを観測した。(この数値は気象関係の資料では今までどこにも出て来ていない数値ですが、建築界では当たり前の情報として使用されています。)
 終戦後の昭和22(1947)に制定された日本築規格建築3001(建築物の構造計算)では、わが国を襲った過去の最大値という意味で室戸台風の最大瞬間風速による風圧力に対応する次式の速度圧が規定された。

q =60√h
ここで、 q :速度圧(kgf/m2)
      h :地番面からの高さ(m)
である。
     μ :0.125kgfs2/m4空気密度(20)
とすれば以下に示すとおり、前式では結果として、風速の鉛直分布のべき指数に概ね1/4を想定していたことになる。
q =1/2ρv2=1/20.125・{63(h/15)1/42=60√h (kgf/m2)

このようにしてできた速度圧の式は昭和25(1950)制定の建築基準法でも施工令第87条にそのまま引き継がれ、その後高さ16mを超える建築物について別途算定式が規定されたが、平成12(2000)に建築基準法が改正されるまで半世紀以上使われた。

台風と建築基準の変遷の一部(喜々津仁密氏記)


下記写真は故郷江津の国道9号線の風景です。
左側に「化粧スレート屋根」の建物の一部が見えます。
他の背景に映る屋根は殆どが陶器和瓦です。
しかも瓦の色は赤茶色が多いのです。
名称は「赤瓦」と言われる石州瓦です。
私の故郷では屋根の施工は
土の中に藁を混ぜた下地を造り、
その上に「赤瓦」を載せるのが普通でした。
それが、耐水合板に瓦を釘で止めていく施工、
こんな施工は何なんだ。
の世界に入ってしまったのです。

     江津市の9号線沿いの風景


4月に入社した時に渡されたA4判のダイヤリーの後辺りに技術資料が付いていました。
この「技術資料付の手帳」をカレンダーと共に、お正月に配るのです。
お役所(官公庁)、設計事務所、建築会社、工務店、工事店、販売店等に
その内容が下記のような速度圧に関する技術資料です。

参考資料(ダイヤリー)より
コロニアルが風で飛ばされる原因は吸引力によるものと考えられる。
一般部の風力係数は、風上では1.3sinθ―0.5で表す。これは2寸勾配でー0.25となり、勾配が大となれば吸引力は小となり圧力に変わる。風下は勾配に関係なくー0.5であるので風下について検討する。
又、軒先、ケラバ、棟部の風力係数はー1.5である。
速度圧は、q=1204√h   h:地上高
で与えられる。2階家は8m以下であるので h=8とすればq=1204√8=201.6=202kg/m2
ここで速度圧  q=60√h を採用すれば
速度圧は、q=60√h   h:地上高
で与えられる。2階家は8m以下であるので h=8とすればq=60√8=169.705=169.7kg/m2
コロニアルが発売された昭和35(1965)には高層の建物に採用することは考えていなかったので、
一般地域ではq=60√8=169.705=169.7kg/m2
が使用されていた。

     強風時屋根に掛る応力


吸 引 力 ・・・・・・PV
コロニアル1枚の受圧面積
0.91
×0.182=0.165cm2
 一 般 部
PV=202kg/m2
×0.5係数×0.165cm2=16.73kg


      屋根が飛散する力


釘の引き抜き力・・・・・・T
T=16.73
×(141+182)÷182=29.69kg
29.69kg
÷4=7.42kg/本・・・・・・釘1本の引き抜き力
従って屋根釘1本の引き抜き力7.42kg/本以上の野地板を使用
杉 12m/m 48.1kg/(平均)  9m/m 25.23kg/(平均)なれば安全でなり。
コロニアルの曲げモーメント
16.73kg
×14.1cm=235.89kg/cm
コロニアルの曲げ強さ
曲げ破壊荷重 35.3kg (スパン25cm、巾25cm) ・・・・・・認証値より
 25cm巾で M=Wℓ/4=35.5×25/4=220.625kgcm
 91cm巾で M=220.625×91/25=803.075kgcm
従って発生モーメント235.89kgcm<803.07kgcm
   抵抗モーメント  OK
安全率803.075÷235.89=3.4
軒先、ケラバ、棟部・・・・・・応力は一般部の3倍となる。
 釘1本の引き抜き力・・・・・・7.42×3=22.26kg
杉 12m/m 48.1kg/(平均)OK、合板 9m/m 25.23kg/(平均)はギリギリであり、合板12mmを必要とする。
コロニアルの曲げモーメント
235.89
×3=707.67kgcm<803.075kgcm
安全率 803.075÷707.67=1.135
曲げモーメントはギリギリになるのでケラバはツメ押さえつきケラバ水切金物又接着剤併用部標準施工に準拠されたい。
耐風に関し次の事項を注意し施工することが必要である。
1.
 棟部
 ・笠木の材質を吟味すること
 (割れ、大きな節及び腐り等のないこと)
 ・タルキに必ず釘をきかすこと
 ・役物鉄板は6尺に付両側10本以上の釘(45mm程度)にてとめること。
2.
 けらば部
 ・ツメ付の役物(クボタ建材標準品)とすること。
 ・笠木と同様、のぼりよどの材質を吟味すること。
 ・役物鉄板は6尺に付5本以上の釘(長さ45mm程度)にとめること。
 ・のぼりよどは下地際タルキに確実に固定すること。
3.
 棟コーナー
 ・棟コーナー役物の両側には5mm程度の折り返しをつけ剛性を増す。
 ・先端のツメは大きくしコロニアルへのかかりを多くする。
4.
 コロニアル小巾物
 ・棟部、下り棟部、けらば部に割り付け上、止むを得ず入る小巾物必ず接着剤にて確実に下側のコロニアルに接着すること。
5.
 下地野地板
 ・必ず実厚12mm以上の板で割れ、大きな節及び腐り等のないものでべた張りとすること。

以上の事が「ダイヤリー」に記され、「コロニアル標準施工」の普及に努めていたのです。
(
このように日本の法律・建築構造・デザイン・施工を基に化粧スレート施工技術の基礎を作られたのは「益野浩」氏なのです。この人の事は何かの機会にお話しします。)

私が屋根に携わったのは実はもう少し後の事です。
しばらくの間は外壁材の販売技術に関わり、
当時でも珍しい病気「結核」で9ケ月休職後復帰したのです。
そして、本格的に『屋根の世界』にのめり込んで行くのはこれからなのです。

ありがとうございます。