ブログBlog

2023.08.05

建物の外部被害に関わる資料 その 24 『 速度圧 ② 』

顧問の坪内です。
私の入社した昭和47(1972)頃から
「化粧スレート」が大型物件の建物屋根にも採用される事が多くなりました。
前回、屋根の施工について、固定するのに重要なのは
屋根釘の保持力であると少しお話しました。
「化粧スレート」の代表である「カラーベスト」は
もともと米国が発祥で、その製法は特許で住宅の屋根・壁に採用されていました。
その特許製法を取得し昭和35(1965)に日本で製造販売されてきました。
ここで少しカラーベストの特徴をお話しますと、
1.
セメントを固めるのに最小限度の水しか使わない。
 (建築現場で、混錬時「水セメント比」と言われる水が少なく固めると強度が出る)
 ※ 密度が高く空隙が少ないので強度・耐久性がある。
2.混ぜる繊維に方向性が無い。
 (他の製法・抄造では横方向の強度が70%)
3.
ベルトコンベアーで連続成型が出来る。
等の特徴があり、現在日本(世界)で製造・販売されているのは
KEMWの屋根材」「カラーベスト」だけなのです。
60数年前から販売されてきた「化粧スレート」ですが、
材質がシッカリしていたのは製造法から来た性能を生かした
「カラーベスト」1社だけで、他の「化粧スレート」屋根材は、
廃盤・消滅の道を辿ったのです。

少し脱線しましたが、
屋根下地は当初、国産の杉材の小幅板でした。
小幅板では撓みが大きく、接合部が多いので釘が効き難い場所が多くなる弱点がありました。
又、節などもあり保持力のバラツキ等不具合があり、
屋根下地は基本的に耐水合板(12mm)と決められました。
ところが大型物件では耐火性・防火性等が必要となり、
可燃物の耐水合板は使えない物件も出てきました。
その頃、鉄骨造の耐火物件では「木片混入セメント板:通称センチュリーボード」が、
耐火30分構造として認められました。
一方。鉄筋コンクリート造の勾配屋根下地への採用の問い合わせも出てきました。
昔からの大型建築物の屋根下地は何を採用しているのかと調査すると、
大手建築会社のT社では「オガクスモルタル」を採用しているとの情報を得て、
「オガクズモルタル」の研究に着手しました。
同時に混和材として「各種パーライト」や「繊維等」を探しました。
「オガクズモルタル」は配合が難しく、
時々モルタルが固まらないとの話もありました。

以前のブログ2022.04.09に台風で飛散した「オガクズモルタル」の現場の事を書いています。
住宅の外部環境と小屋裏・内部環境を考える その  29
 『 地衣類・屋根上 Ⅷ 』 沖縄の屋根「かわら27型」 

写真の上方(北位置)に赤い星と青い星で表した2地点があります。
赤地点は本部町と言われる処で1975年に「沖縄万国博覧会」が開催されたところです。
青地点は奥間ビーチと呼ばれる「オクマリゾートホテル」のある処です。
下記写真の赤色地点での写りが少し悪いのは1975年「沖縄アーカイブ研究所所有で
真境名敏夫氏撮影の『EXPO’75 OKINAWAから拝借した「沖縄海洋博迎賓館」であるからです。
実はこの屋根に「かわら27型」が採用されていたのです。
今は取り壊されて在りませんが、1977年頃この屋根の補修を行うために訪れた事があります。屋根材は良かったのですが、屋根下地が「オガクズモルタル」と呼ばれたもので、野地下地の性能が悪かったのです。
「オガクズモルタル」の話は又の機会にお話ししますが、当時私は「オガクズモルタル」の代わりになる「パーライトモルタル」の開発を行っており、後に東邦レオ㈱社が販売する「スカイモル」に取って代わるようになりました。
 

1975年沖縄海洋博迎賓館EXPO’75 OKINAWAHP」

丁度この現場では「オガクズモルタル」の保持力不足で屋根材が飛散したのです。
別に新たに下記のような写真を見つけました。
ちょっと怪しそうな豆高原「怪しい少年少女博物館」のブログ」と言うHPにありましので、お借りします。
下記の写真から見ると
「沖縄海洋博迎賓館」は海に面してかなり危険な条件で建てられています。
因みに、沖縄では速度圧は q=90h が採用されていました。

      1975年沖縄海洋博迎賓館
「豆高原「怪しい少年少女博物館」のブログ」HP」


建築研究所の喜々津仁密氏が「建築物の台風被害の軽減に資する基準の変遷」の論文の続きです。
丁度沖縄海洋博の行われた時からです。
この表の中の1981年に建築物荷重指針・同解説の改定(風荷重の全面改定)高層建物に対する速度圧が追加されるとあります。即ち

が本格的に採用されだした時期です。

   台風と建築基準の変遷の一部(喜々津仁密氏記)


前回、化粧スレート施工技術の基礎を作られたのは「益野浩」氏のお話をしました。
さて鉄筋コンクリートの勾配屋根下地として、「オガクズモルタル」に替わって「パーライトモルタル」下地が出来てきました。
そこで益野氏は社内の営業部門に下記の通達を出されました。

昭和52(1977).9.24
コロニアル使用高さ限界に関する件
パーライトモルタルによるRC造スラブえの施工法のメドがついて参りましたが、現行コロニアルでは耐風性能上おのづから使用上高さの限界があります。以下述べる限界内で設計活動される様ご配慮下さい。
風に対する安全限界
日本建築学会、建築物荷重基準案による。
(
従来より緩和され、且つ考え方が複雑になっております)
1.
 設計風荷重:P
  P=C×q×A
    P:設計用風荷重
    C:風力係数
    q:設計用速度圧
    A:面積
2.
 基準圧力:q
  q=q0××L×I
    q:基準圧力
    q0:基準速度圧
    Zω:地域係数
    L:受圧面積係数
    I:用途係数
3.
 基準速度圧:q0(建築物荷重基準案)

 E:環境係数
     海岸、湖岸、山頂等  E=1.2
     一 般          E=1.0
     市街地、森林等    E=0.8
4.
 風力係数:C(建築物荷重基準案)
5.
 地域係数:Zω、受圧面係数(建築物荷重基準案)
6.
 コロニアル使用高さ限界の考え方
  例 1.
   市街地に建つ中層建物、RC造、地区大阪
   q=q0××L×I
    地域係数    Zω:地図(P4)より
    受圧面積係数 L:屋根長辺長さ7mとして
    用途係数    I:RC造 重要 
        ×L×I=0.85×1.1×1.25=1.168751.17
   ウイークダイアリー末尾の技術資料によれば
   コロニアルの設計用速度圧 q=202kg/m2が使用限界
            風力係数は上記計算の中に入る
   従ってq0=202÷1.17=172.6kg/m2となる。
   P2q0の表より環境係数 E=1.0の場合は
       高さ 16m=168kg/m2が高さ限界となる。
   海岸より 1km位迄は  E=1.2となり
       高さ 13m=168kg/m2が高さ限界となる。
7.
 「現行コロニアル」使用高さ限界表

  注意事項
  1. メンテナンスの事を考慮して将来補修の為に屋根面に上がり易い建物形状に限ること。
  2. 上記使用高さ限界は計算上可能な限界であり、コロニアル曲げ破壊荷重は35.3kg(スパン25cm25cm)で計算  

し、軒先、ケラバは安全率1.135である。
  3. 一応使用限界は22mとする。(  )内高さを超える分に対しては軒先、ケラバ棟部等は安全率強化のため

接着剤併用とする。

このようにして昭和52年には大型建築物件用の屋根下地材が出来上がりました。

ところが、風圧力の大きい箇所(軒先部、ケラバ部、棟部)の補強は接着剤です。
接着剤補強は上部材料の裏面と下部材料の重なり部に塗布します。
即ち、塗布されているか否いかの判定が出来ないのです。
昭和52年~昭和54年に掛けては次の補強法の開発が始まったのです。

今回はこれまで、
ありがとうございます。