ブログBlog

2023.08.19

建物の外部被害に関わる資料 その 25 『 速度圧 ③ 』

顧問の坪内です。
釘の効く屋根下地材「オガクズモルタル」の施工に関しては、
当時も文献は少なくT社へのヒヤリングもパットしない物でした。
「オガクズモルタル」での不具合は樹脂の中に含まれる糖類等で、
モルタルが固まらない現象が発生する事です。
一方、「パーライトモルタル」のパーライトは
基本的に無機質なのでその心配はありません。

ここで少しパーライトについて学びます。(農業のミライminorasuHPを参考に)
パーライトとは黒曜石や真珠岩などを粉砕し粒度を調整した粒を
1,000
℃の高温に加熱し発泡させて(ポン菓子の要領で)製造した軽量骨材です。
僅かな結晶水を含んでおり、一般的な種類は黒曜石、真珠岩、松脂岩とあります。
パーライトは軽量骨材、土壌改良材、断熱材、濾過助材等幅広く採用さています。
1.
濾過助剤
1950年代に珪藻土濾過助剤の代替品として、パーライトが使用されるようになりました。
化学的に非常に安定しており、触媒やキャリアとして使用されます。
2.
建築材料・断熱材料等
(㈱東邦レオはこの頃東邦パーライトと言う名で起業されました。)
1960
年代からは濾過助剤よりも、断熱材や充填材での用途が増加してきました。
多孔質材料なので、軽量・断熱性・防火性・防音性などに優れています。
そのため、他の事業部では耐火被覆材として使用され、近年はサィディングボードに使用されることも多くなりました。
また、断熱材として、液化天然ガス (LNG) の貯蔵タンクや船舶などの冷蔵・冷凍保存の分野にも大規模で使用されています。
3.
園芸用
そして、1980年代から多く培養土や鉢底石などに使用されるようになりました。
非常に軽量で様々な特性を持つため、土壌の改良材として広く使われています。
使用する際は、土全体に対して12割程度のパーライトを混合すると良いとされています。
セメントにパーライトを添加して、軽くて釘打ちの出来る丈夫なモルタルを打設することは、
学生時代のコンクリートサンプル製作以来で楽しい作業でもありました。
パーライトの特性(下図右写真:中国産)
パーライトの原石は真珠岩と黒曜石の2種類が使われています。
それぞれ特性があり、その特性を活かす形で使用されます。
1.
真珠岩パーライト(下図右写真)
真珠岩パーライトは、真珠岩を高温処理して得られる多孔質粒子です。
真珠岩は水分含有量が高いため、スポンジ状の多孔質構造となります。
保水性と透水性に優れているため、水持ちの悪い土壌に使用されています。
2.
黒曜石パーライト((下図右写真;産地は隠岐の島、礼文島、和田峠等)
黒曜石パーライトは、黒緑色をした黒曜石を高温で加熱し、水分を蒸発させることで得られます。
真珠岩と比較し水分の含有量が少ないため、加熱処理により微小な孔が多数生じます。
この微小な孔には水が浸入しにくいため、排水性に優れていることが特徴です。
また、ミネラル水に変化させるイオン交換性も有しており、根腐れ防止効果を発揮します。
このような特徴から水はけの悪い土壌に多く使用されます。
基本的には真珠石のバーライトは粉になり易く、黒曜石のパーライトは小さな球状です。


           感動の園芸・儲かる農業HP


2種類のパーライトからの選定では黒曜石のパーライトとしました。
①モルタルの水セメント比少なく安定している。
②モルタルのスランプ値が安定している。
③他の事業部でも異なる方法で採用している。
等の理由での採用です。
更に、ポンプ圧送や釘打ち性能の長期化等の性能アップの為、
㈱東邦レオ社は混錬材に繊維、ゴムチップ等の添加物を模索されました。
私たちは風圧力に耐えるための技術開発です。
施工仕上げ・材質面では
①最適混合比の模索
  (モルタル施工後13週間釘打ち施工可能)
②混錬後生比重とポンプ圧送後・屋根施工前の生比重の把握
  (安定した保持力確保)
③同施工時の乾燥比重と圧縮強度、釘保持力関係の把握
  (施工後直ぐの台風でも飛散しない)
④簡易保持力測定器具の開発
  (持ち運びが簡単な機器:パテントが取得出来たので長期にクローズで普及)
⑤屋根下地施工時の不陸レベルの規定の作成
  (施工後の屋根材の破損が無いように)

さて、屋根下地は「スカイモル」に決まって来ましたが、
屋根材を固定しているのは釘です。
「化粧スレート・コロニアル」の全体的な形状は60年前とは少し異なってきていますが、
台風性能に関わる屋根材の面積や釘の位置、必要保持力はほぼ同じです。
そこで、「コロニアル」の飛散する限界の材料性能は前回の計算式や各種試験で分かります。
その結果、屋根材固定釘の必要保持力は≒27kg/本となります。
その当時、大阪管区気象台を訪ねて台風について問い合わせたことがあります。
「台風の平均風速は変則に流れる強弱の風であり、又その中に細かく振動する波があります。」
「この振動は02秒間隔です。」

この内容が本当なのか間違っているのかは分かりませんでしたが、

当時の私は「これだ」と思いました。
「スカイモル」に留めた釘の繰返し引張り試験をしなくてはいけない。

釘の繰返し引張り試験の試験体が木材系なら、
繰り返し荷重を与える事で強度が上がる場合と下がる場合があります。
引張り力が小さい場合は強度が上がり、
大きく限界に近い場合は最終強度が下がります。
ところが耐火野地板や、スカイモルの場合は
材質が固いので最終強度が下がります。

屋根材の固定には釘が命です。
コロニアル釘の形状はリング釘と呼ばれる形をしています。
リング釘は線材をローリングして表面に横溝を作ります。
この横溝が木質材に入り込み引き抜き力がアップします。
そして、薄い材質のスレートを押さえるには
通常の釘頭よりも大きな釘頭が必要なのです。
そこで線材は少し軟らか目にすることで、
大きな頭を叩き出すことが出来ます。
この線材が同時に表面に付ける溝を深くすることが出来ます。
ところが、そうなれば釘の腰が弱くなり、
野地が固ければ(耐火野地板やスカイモル等圧縮強度が高ければ)
釘は途中で曲がり易くなってしまうのです。
リング釘は線材が3.2mmで長さが32mmの形が下図です。

コロニアル標準


スカイモルのテストサンプルは豆腐のパックで作りました。
100
×60×40の豆腐のパックに
スカイモルの混錬したサンプルを入れ乾かします。
配合の基本試験は東邦パーライトで行っていました。
材令による「水中養生・オートクレーブ養生等」
養生比較について、東邦レオが中心で行いました。
我々は室外暴露、室内養生の条件での比較です。

スカイモルサンプルの中央、
対角線の中心に3×32mm  溶融亜鉛メッキ釘を1本留めます。
サンプル数は配合により各10サンプルを
釘打ち後直ぐの引き抜試験と繰返し引張り試験の比較です。
社内では繰返し引張り試験を「疲労試験」と名付けました。
そして、
経過日は1、2、3、456日、1、2、3、4週間、3ケ月、6ケ月、1年、2年、3年と。
疲労試験の条件は
①静荷重25kg/本、
②振動時間0.5秒、
③振動回数5000回です。

試験を続けていると、この疲労試験後で、
保釘力が35kg/本以上であれば、
疲労試験が5000回でも抜けないことが分かりました。
そこで、スカイモル系材質下地材の場合は
必要保釘力の1.3倍の保釘力が必要な事も分りました。

丁度この時期、名古屋の㈱屋根技研(都築 巌社長:故人)より連絡がありました。
「足助いこいの村」愛知の大型建築物件で、
屋根下地材で良い材質が無いので苦労をしている情報が入りました。

都築社長とはこの頃から亡くなられる迄、
日本の屋根の部品開発話で語り合ったものです。
(
この年1977から18年後1995年に「建設省中高層建築評価認定工法」の公募があり、
都築社長から「坪内さん」ところはどの様な対応をしているかの問い合わせがありました。)
おそらく、この公募が金属屋根、瓦屋根業界を真剣に台風対策(強風対応施工)
に向かわせる政府の政策の始まりであったかも知れません。

「足助いこいの村」愛知は諸事情で、今は廃建築になっている建物ですが、
一時は名古屋では有名なであったと聞いている建物です。
請負ゼネコンDの所長がわざわざ名古屋から「疲労試験」の様子を見に来られ、
「こんな試験までしている商品なら直ぐに使うぞ」と採用していただきました。
この建物は後で問題となった「年金基金」関連の物件です。
今どうなっているのかHPを調べて見ると
「いこいの村愛知」として廃墟の写真があります。
この定礎から見ると昭和53年に完成しています。
因みに、疲労試験機は当時でもメーカー品を買えば1000万円以上する時代で、
予算は30万円の手造り試験機でした。(因みに世界に1台のものです)
以降この試験機、優秀なメーカーものが入るまで20年以上使用しました。

   「足助いこいの村」愛知:廃墟散策HP


スカイモルの打設が全て上手くいくとは限りません。
施工時には既に固くなって、釘が曲がってしまう事もあります。
その時に使用するのがスカイモル専用釘(スレート釘)です。
この釘はコロニアル釘より少し硬く、少し捩じってあります。


スレート(スカイモル)用釘

因みに釘は少し捩じると腰が強く曲がり難くなるのです。

このようにして私は釘の開発にも少しずつのめり込んで行ったのです。
次は耐風施工法の開発です。

ありがとうございます。