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2023.09.02

建物の外部被害に関わる資料 その 27 『 速度圧 ⑤ 』

顧問の坪内です。
いつも池本工務店の事業にご支援頂いてありがとうございます。

以前にもお話しましたが、私が入社した昭和47(1972)には
「化粧スレートコロニアル」を日本で販売して10数年が経っていたので、
主な施工に関する仕様は既に決められていました。
ただし、仕様は2階建て住宅に対応できるものです。

主な材料は下記の仕様です。
1.
屋根材 コロニアル 本体にコロニアル釘88/坪付(溶融亜鉛メッキ釘)
2.野地板 耐水合板厚12mm(世間では勝手に杉板の小幅板(1215mm)や合板9mm使用もあった)
3.
防水紙 アスファルトルーフィング22kg(後にアスファルトルーフィング940と呼称変更)
4.
金属役物としてカラー鉄板#29(t=0.35mm)
 ①軒先水切り
 ②棟包板金
 ③ケラバ板金
 ④捨板板金
 ⑤雨押え板金
 ⑥棟コーナー板金
5.
接着剤(酢ビ系接着剤)
6.棟・ケラバ・壁仕舞には木材使用
 ①ケラバ部 のぼり木 18×45
 ②棟部  笠木    18×90
 ③壁部  貫板    18×90 18×45

上記仕様の中で、市場流通と言えば
1.屋根材 コロニアル 本体にコロニアル釘88/坪付(溶融亜鉛メッキ釘)
だけがメーカーからの商品で
2.野地板は合板メーカーから問屋、新建材店、工務店、現場。
3.
防水紙は防水メーカーから問屋、防水工事店、屋根施工店、現場
4.
金属役物は鋼板メーカー、金属問屋、販売店、加工板金店、屋根工事店
5.
接着剤は接着剤メーカー、販売店、屋根工事店、現場
6.棟・ケラバ・壁仕舞木材は製材店、木材販売店、工務店、現場
で屋根仕様を決めている屋根製造メーカーが他の材料を販売する事はありませんでした。
(
金属板金役物が純正品として35%程度出荷されていました。)
上記の中で速度圧(
q =60.h)が必要である箇所は
1.
屋根材
と 2.野地板と 6.棟・ケラバ・壁仕舞い木材部です。
前回のブログの中で屋根材と野地板の関係、
屋根釘は、速度圧 (
q =60.h)の仕様に耐える設計と保持力のある釘が分っています。
そこで、金属役物の棟包板金やケラバ板金が飛散しない為には
6.
棟・ケラバ・壁仕舞い木材の木材にしっかりと固定することが大切です。
そして①目視で確認できる事 です。

職人の中には屋根釘で棟包板金を笠木に固定する人もいます。
屋根釘はリング釘でギザギザが付いていますので、
保持力は大きく笠木に打ち付けると
しっかりと効き、抜ける事はありません。

ところが釘径が太いので、笠木が割れてしまうのです。
又、笠木が硬いと釘が曲がってしまう事もあります。
更に工務店によれば、笠木の標準指定寸法の18mm×90mmの材料を
15mm
×90mm12mm×90mmに薄くするところもあります。
こうなれば、いくら良い釘でも釘打ち時に
笠木が割れてしまい必要保持力も無くなります。

昭和40年代頃からは釘にスクリュー形状が登場して来ました。
その少し前から外壁材にサイディングが焼き杉の代わりに採用されて来ました。
それまで木質系のサイディングにはストレート釘が使われていました。

そして、窯業系サイディングの登場です。
多くのメーカーでは窯業系サイディングにはスクリュー釘が採用されてきました。
私が入社した時には「コロニアル」と同じ工場で「不燃サイディンク」の名で、
窯業系サイディングを製造販売されていました。
その時、既に細いステンレスリング釘が採用されていました。
窯業系サイディングは重いので木造の少しの振動と経年でスクリュー釘が浮いてくるのです。
それは窯業系サイディングを発売して10年以上経過して分かる事です。
そして、細いステンレス釘にリング印を付けるのは釘メーカーでも難しかったのです。
多くの窯業系サイディングメーカーは後に殆どリング釘に替わって来ました。

私たちが依頼していた釘メーカーの Yはそれらの技術を有していて、
外壁材発売当初から、ステンレスの細い釘にリングを付けていたのです。
ステンレス釘に少しの捻じれのあるスクリュー形状を付けることは
加工硬化を起こして、材質が硬くなり腰が強くなります。
即ち曲がり難くなるのです。

以上の状況から、耐風対策には
木材に良く効く形状の固定が重要と考え、役物固定釘を作りました。
即ち細い釘に捩じりを入れたスクリュー形状に
リング形状をミックスした「リングスクリュー釘」と呼ばれる釘です。

この釘にはもう一つ逸話があります。
1
年ほど前から Yで試作を繰り返し素晴らしい形状と
表面ブロンズ処理の釘が出来上がったのですが。
Y
から 「W社からよく似た釘がパテントを出しておりドラブルが嫌なので自社では製作しない。」
と言って来たのです。
その頃、私はパテント出願の担当もしており、
釘の「実用新案」や「意匠」も沢山出願していましたので、
「大丈夫、沢山出しているから」と言ったのですが・・・・・・。

結局、 Y社で造るのを諦めてWの担当者を呼んで、
造ってもらったのが今の「リングスクリュー釘」です。
仕上がりの「形状・色」とも試作したものとは違いますが、
この出来上がりが精いっぱいと言われるので妥協したものです。
現状の釘も他の釘と比較すれば保持力も充分、
色もそこそこの仕上がりです。

「リングスクリュー釘」


釘の業界では今パテント問題も落ち着き
Y社のスクリング釘」と呼ばれる少し変形した釘が流通しています。

さて、釘の保持力測定ですが、
前回も説明しましたように「スカイモル」が発売・施工された時
一番重要なのは釘の保持力と説明しました。
保持力で一番理想なのが5070kg/本です。
実は釘の保持力が100kg/本を超えると
施工時、屋根材が割れて差し替える必要がある時、
釘抜き専用工具のスレーターズリッパーで釘が引き抜き難いのです。
そして防水シートの破損にも繋がるのです。

さて次に、仕上がったスカイモルに釘で施工した時、
確実に保持力があるかという事です。
以前にもお話したように
スカイモルをミキサーで゙混錬した時の「生比重」を計り
ポンプ圧送した時の比重を計れば
出来上がった「スカイモル」の保持力が予想されます。
現場では、コロニアル用の釘で最低35kg/本の保持力が必要です。

先輩に 「武良 宏」 さんと言うマニアックな工具開発者がいました。
彼の研究室には、大学の研究室のようにあらゆる機器がありました。
最先端のビデオ機器、騒音測定器を搭載した環境測定車等です。
そんな武良さんなので、部品・測定機器等の購入製作も得意で、
多くの器具を共同で開発しました。
屋根材施工でもっとも重要なのは切断工具です。
「シングルカッター」呼ばれる今でも使われている工具ですが、
この話をすると 速度圧に関係ないところに脱線しますので次にします。

インターネットで「簡易保釘力試験機・釘保持力試験機」
探すと下記の写真が出てきました。
左は徳島の工事店さん、右は明石の工事店さんです。
どちらも真面目で地域で信頼のあるお店の様です。
真面目な人でないといちいち現場の保持力は測定しません。
手で持っているトルクレンチは
右が新しいもので左は開発当時に近いものです。
黄色の楕円に囲まれた釘抜き部が
武良さんと共同でで出願登録された部品です。

    コロニアルの釘測定風景(IN写真より転載)


この黄色の楕円部は下記のような構造になっています。
①釘を引っかける箇所
②支点となる箇所 
③トルクレンチで計測する箇所
④回転軸となる箇所 

        釘抜き部の構造姿図


Ⓐ図の部品の①部に釘を引っかけて ②の箇所を支点に①の箇所を持ち上げます。
①~②の長さに①の上向きの力を掛けると
①の持ち上げられる力となります。
その時Ⓑ図の台座で②の支点を安定し
ⓒ図の②が支点となり④が回転軸となります。
その回転の力をトルクレンチの回転に変換すると
①の釘の引き抜き力が出るのです。


      釘抜き部品分解図


この釘抜き試験機とトルクレンチのセットを何十台も製作して、

東邦レオ社の営業所とKMEW社の営業所に常備し
必要に応じて貸し出したのです。
今ではパテント期間も切れて一般販売していると聞いています。
これらの開発の基本は昭和54(1979)頃の完成となったのです。

そこで「好事魔多し」と言いますが
次に気を引き締めるような事件が起こります。

ありがとうございます。