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2023.09.16

建物の外部被害に関わる資料 その 29 『 速度圧 ⑦ 』

顧問の坪内です。
いつも池本工務店の事業にご支援頂いてありがとうございます。

前回のブログでは耐風施工法の普及の施工事例のお話でした。

今回は「スカイモル」普及のお話です。
前回も少しお話しましたが昭和50年代には厚生年金関係の建物が全国に建設されました。
後に年金基金の不明瞭が問題になり、中止の方向となりました。
その中でも割りと早くに「スカイモル」が採用となったのが三重の物件です。

現在の「伊勢かぐらばリゾート千の杜」HPより


下記写真は現在のホームページの鳥瞰写真です。
この建物で東邦パーライト社も多くの勉強をされたと思います。
「スカイモル」仕様の各部の納まりを多く決定した物件です。
そして、前回施工工具を開発した「武良 宏」氏にお願いして、
「スカイモル」施工の初めから終わりまでビデオテープに収めた物件でもありました。
1.
軒先部の納まり
2.
隅棟部の納まり
3.
水平棟部の納まり
4.
ケラバ部の納まり
5.
谷部の納まり
6.
壁当たり(流れ側)部の納まり
7.
壁当たり(水平側)部の納まり
などです。

また赤色矢印棟は体育館になっています。
この体育館の軒先は段積施工と名づけられた
「軒板」を数枚重ねて厚みを見せる方法です。
「スカイモル」とは少し異なりますが、
特殊な納まりなので少しお話します。
「軒先段積・ケラバ段積施工」
日本建築の「檜皮葺き屋根」「茅葺き屋根」のように
軒先に厚みを持たせる手法です。
この方法は昭和50年頃に流行り出しました。

現在の「伊勢かぐらばリゾート千の杜」HPより

  

ある設計事務所が「奈良学園前の住宅」で大胆に採用され、
軒先の厚みを300mm(60枚重ね)で設計されたのです。
更に屋根勾配を45度にした図面を
設計資料集「テクニカルシリーズ」に載せると
全国から問い合わせが寄せられたのです。
そこで、下記のような基本図を作成し、
この体育間でも使用されたのです。
この施工法の注意点は

   段積箇所から雨漏りしない事。

   軒先で口が開かない事。

   段積部が塊で倒れない事。

等です。
そのためには幾らかの工夫をしてパテント申請をしたのです。
①あらかじめ35段の軒板の塊を造り

②互い違いに施工する。
③軒先の口が開かないように段積板下の
④広小舞に内側を5mm低く傾斜を付ける。
⑤段積板が軒先側に倒れないように吊り子(段積プレート)を取り付ける。
⑥軒先水切りの固定で防水シートが破損しないように
⑦粘着付防水シートは軒先水切りの上に施工する。
等です。
下図は10数段のものですが、
「学園前住宅」での採用例は
更に難しく、段積枚数も多く、重量も重いので、
中心にステンレスのボルトを入れての施工でした。

       軒先段積施工断面図


また、三重の「スカイモル」現場では
規模が大きく屋根も連続していたので、
後日新たな問題が発生したのです。
経年変化で、躯体が収縮して屋根材が押されて盛り上がり、
「エキスパンションジョイント」が必要になった現場でもありました。
完成から数年経過してから連絡があり、
「屋根の一部が大きく盛り上がったので、現場に来てほしい。」
との連絡があり、急いで現場に来て見ると
裏手にある少し長い宿泊棟の屋根の一部が盛り上がっているのです。
取りあえずの対処施工として、
盛り上がった箇所の「コロニアル」を取り除き
屋根材の片側を互い違いに切断して施工を行っての解決です。
それからは「スカイモル」の下地に縦桟を必ず入れて
大型物件には必ず「エキスパンションジョイント」を造るように指導したのです。

 現在の「伊勢かぐらばリゾート千の杜」HPより


時にはこのような事件も発生しました。
推奨している「スカイモル」施工では無かったのですが。
屋根工事店から連絡があり、
「ゴルフ場の施工があり、スカイモルを勧めたのですが。」
大手ゼネコンのS建設に説明に行くと
「パーライトの何を使おうとゼネコンの勝手やろ。」
「現場は俺たちの方が良く知っているんや。」
「そーですか、ここも小高い丘の上に建っているので、屋根材が風で飛んでも知りませんよ。」
とのやり取りをして引き上げました。

半年後にこの現場の西側に台風が通過します。
そして案の定「屋根材が風で飛んだので、対応を教えて欲しい」
と連絡を受け駆け付けた事もあります。
そして、下地が硬い時用の釘を提供し対応したのです。

      Hカントリークラブのグーグル写真


次は岡山総社市の物件です。
下記写真も小高い山の上に立つ物件です。
この写真の左側(東側)10kmの所には

「秀吉のオオㇺ返しで有名な備中高松城」があります。
水攻めで有名な「足守川」は
今望んでいる「高梁川」より東にあります。
旧岡山の国民休暇センターで、現在の「サントピア岡山総社」です。
この建物の高さも高く立地条件も高い位置にあります。

現在の「サントピア岡山総社」HP鳥瞰より



ここへの「スカイモル」PR
あの「武良 宏」さん製作の「スカイモル施工法の全て」です。
三重の厚生年金休暇村で製作したビデオとテレビを抱えての勉強会です。
1
時間ほどの説明会を終えると今までにないお礼を言われて、


  現在の「サントピア岡山総社」HPより

こうして色々な課題を解決しながら「スカイモル」の普及に努めたのです。
そして、強風施工法は鹿児島の離島や沖縄への普及も技術要請が来たのです。

ありがとうございます。