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2024.02.03

建物の外部被害に関わる資料 その 37 『 台風21号 ⑦ 』

顧問の坪内です。
いつも池本工務店の事業にご支援頂いてありがとうございます。 
さていよいよ台風201821号の被害調査に入ります。
被害分類項目は下記の通りです。
被害写真の総枚数は 4057枚でした。
その内工作物以外の写真が2809枚ありました。
暴風雨・高波・高潮に伴う、防波堤波・空港や港湾の浸水・
船舶の転覆・樹木や電柱の倒壊などの写真です。
その中から屋根に関わる写真を取りだし、
下記の四項目に分類してみました。
1.
屋根材被害
   (瓦、化粧スレート、金属シングル、波スレート) 779件《分類比率 62%》
2.
ベランダ・駐車場被害

   (波ポリカ、平ポリカ)  148件《分類比率 12%》
3.
建物被害
   (1階木造、2階木造、2階木造屋根、非木造、神社・仏閣等)  171件《分類比率 14%》
4.
その他
   (仮設足場、外壁、フェンス・塀、ビニールハウス、野地板、室内、太陽光、アンテナシャッター) 
   150件《分類比率 12%》 

合計 1248件 (4057件からは総数比率30.8) 

以上の被害項目を棒グラフにして見ました。
その内、純粋に屋根の被害写真が779件あります。
そして、一般的に良く被害があったとされている駐車場や
2
階ベランダ゙の波板屋根が148件あります。
更に屋根を載せている建物の被害は171件ありました。
又前回お話した仮設足場等の被害写真等も150件ありました。
文章での表現は難しいので、後ほど写真で報告します。

      被害項目件数の棒グラフ


さらに被害の分類比を円グラフにしてみました。
ベランダ゙・駐車場、建築物、その他は各10%ほどで
残りの60%が屋根材中心となります。

     被害項目の百分率円グラフ

屋根の台風被害を分類する時重要な項目として
1.
屋根の形状
2.
屋根の部位
3.
屋根材の種類
4.
建物の立地条件等
5.
建物の経年
があります。

⒈ 屋根の形状の変化
下図は住宅支援機構の平成29年度の屋根形状の資料です。(n=2,999)
台風2018.21号が発生したのは平成30年です。
平成7年に比較して平成29年は切妻屋根、片流れ屋根(段違い屋根)が主流となってきています。

① 切 妻  32.8%40.7%
② 寄 棟  49.5%13.2%
③ 入母屋  5.0% 0.2%
④ 陸屋根  5.4% 1.0%
⑤ 片流れ  1.7%30.5%
⑥ 段違い  0 % 9.8%
⑦ 入母屋  5 % 0%
無落雪  3.4% 3.9%

建物全体の形状が変化しだしたのはやはり阪神淡路大震災(平成7)以降です。
1.
 特に屋根に関しては、重量の軽い屋根材の使用。
 (瓦屋根の不採用と金属系屋根材の採用)
 (瓦屋根の土葺き施工の禁止で釘またはビス固定の施工)
2.
 重い部材採用の比率を避ける
 (寄棟形状から片流れ屋根の採用)
3.
 軽量屋根の長寿命化
 (亜鉛鉄板屋根 → ガルバリュウム鋼板 → ジンカリュウム鋼板 → ステンレス・チタン等)
4.
 2000年以降の採用率変化が顕著
 (平成14年~切妻屋根が増えています。)
5.
 平成19年からは寄棟屋根が減少して片流れ屋根が増加しています。

        屋根形状採用の推移


平成29年の全国屋根形状シェアーと
近畿地区の屋根形状シェアーを比較すると下記のようになります。
      全国   近畿
① 切 妻  40.7% →45.1%
③ 寄 棟  13.2% → 14.5%
⑦ 入母屋  0.2% → 1.2%
⑤ 陸屋根  1.0% →  0%
② 片流れ  30.5% →28.9%
④ 段違い  9.8% → 9.7%
⑥ 無落雪  3.9%  0%
棒グラフで比較すると下図のようになります。
全国比較から見ると無落雪(北海道)3.9%を除けば良く似た比率になっています。

     屋根形状の全国と近畿の比較


地域別の屋根形状のシェアー比較を見ると
近畿と九州は良く似た傾向にあります。
首都圏での寄棟の傾向はまだ強いようです。
北海道の雪質は軽いので安定して無落雪屋が多いようです。

       屋根形状の全国比較


下記の
屋根の形状は日本建築学会資料を参考にして、
平成29年度の住宅支援機構の資料から
近年の傾向等(段違い屋根・無落雪屋根)を追加し屋根形状を表しました。
災害被害を調査する上で最も重要なのは被害を受ける前の建物の状態です。
まず屋根がどのような形状をしていたか。
そしてどのような施工を成されて、
どのような気候に耐えて来たか(経年)の状態です。
屋根の形状はそれなりに理由があり
(
地域・気候・風土等に合わせ)出来上がって来ました。
そして時代ごとに屋根勾配も変化して
(
材料開発・施工体制・情報交流等)発展して来ました。
それらが、計画的にまたランダムに点在して
集団(街・村等)が形成されています。

それら屋根の被害調査を僅かな調査資料(急な現地調査)
良否判定をするのは難しい事です。