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2024.02.10

建物の外部被害に関わる資料 その 38 『 台風21号 ➇ 』 (伊根の舟屋)

顧問の坪内です。
いつも池本工務店の事業にご支援頂いてありがとうございます。 

さていよいよ台風201821号の被害調査に入ります。 
屋根の形状については先の報告書に約20のパターンがあり、
近年の住宅金融公庫への届け出では7つのパターンと報告されています。

上位3つのパターンでは
①切妻です。
切妻は屋根勾配が四角形の建物の2面にしか付いていません。
棟を境につの傾斜を葺き下ろした形です。
切妻屋根は、最もよくる形状の屋根です。
オーソドックスな形で広く用いられている形状です。
最上部から2向に向け屋根が下がっている三形の屋根です。
住宅や神社仏閣まで古くから広くに使用されています。

       切妻屋根の部位説明

中国から伝わった仏教建築、則ち奈良時代の少し以前に
創建された神社はほぼ切妻造であったやうです。
古代では切妻造の格式が高いと考えられていました。
本においては古くより切妻屋根は寄棟屋根より尊ばれ、
神社建築で有名な「伊勢神宮」や「出雲大社」はこの形式です。

一般の住宅では西日本で多い傾向があります。
本だけでなく、世界中で最もポピュラーな屋根なので
・洋どちらの外観にも合うとわれています。
屋根がなく △ に見える部分は「妻側」、
屋根がある部分は「平側」と呼ばれます。
三角部分の壁側(妻側)は屋根がないので、
特に棟に近い部分はよく陽や風雨にあたり劣化しやすいのです。
只、この屋根は単純な形状なので屋根の雨仕舞いは良く、
・メンテナンスのコストでも有利です。
特に4.5寸勾配は物理的にも自然科学的にもお薦めです。

この屋根形式で玄関をどこに造るかで街並みが変わります。
妻側と平側のどちら側に
関を設置するかは、
デザインはもちろん
地条件などにも影響されます。
全体的な特徴としては
長所  
① 単純な建築様式なのでコストが安い。
② 同じく、大棟、ケラバ、軒先等単純なので
漏りのリスクが少ない。
   (雨水の流れが単純で、
はけが良い)  
③ 屋根裏(小屋裏)の空間も単純で空気の流れを計算し易いので換気性が良い。
④ 和風・東南アジア・中国・アフリカ・ヨーロッパ、アメリカ等どこでも似合う。
  
⑤ 屋根面も単純なので近年お勧めのソラーパネルが設置し易い。
短所
①.妻側(ケラバ側)の壁
面が劣化し易い。  
②.屋根形状が単純なので住宅デザインが難しいかな。

切妻建物の集落で有名なのは「伊根の舟屋」です。
学生時代の恩師「地井昭夫」先生が
漁村に魅せられて調査された場所です。
あの寅さんのロケ地にもなりました。
そして、50年ほど前に外壁材販売で通った
京都府与謝郡岩滝の建材店の
少し北域の離れたところにあります。
更に、もう少し北に行くとあの「浦島太郎」伝説の『浦嶋神社』もあります。


『漁師はなぜ、海を向いて住むのか?』地井昭夫スケッチより


本来の舟屋は、漁船漁具を収納するための船倉です。(以下青字はウィキベティア参考)
人が住める構造ではなかったと言われています。
元の舟屋は、藁葺、
茅葺などの草葺の平屋で、
建築材料は背後の山でとれる茅などの材料が使われていたようです。
梁には
の原木、栗を使用し、
土台や柱は
海水に強いが用いられています。
周囲の壁には古い船板を張ったり、縄
むしろ
を吊り下げた粗末な囲いであったようです。
の中には、小型漁船のトモブト(艫太)やカンコ(引っ掛け竿)を収納し、
その大きさは、間口の広さによって
二艘引き、三艘引きの舟屋とよばれていたようです。


「舟屋 むかし いま 丹後・伊根浦の漁業小史」
和久田幹夫より

一方、現在の舟屋は瓦葺きの
切妻造です。
舟屋の多くは、間口3間、奥行き5間程度の2階建てです。
湾に接した妻側の1階の間口全体に開放されています。
船を引き上げるために内部の床面が
石敷で海に向かって傾斜しています。
満潮時に水面が1階床面の半分程度にまで上がってくるため、
舟屋が海に浮いたような光景となります。

「舟屋 むかし いま 丹後・伊根浦の漁業小史」
和久田幹夫より


この2階建ての舟屋は、1階は船の収納、
2
階は
や縄などの漁具を置く倉庫としています。
網の干場としても使用され、2階の床板は張り詰めてありません。
1
階から漁具を引き上げやすいように
「歩み板」とよばれる幅30 cm、厚さ6 cmの板を渡してあります。
風通しや、水が垂れることに考慮されているのです。
風通しのため壁のない舟屋も多かったようです。
時代の流れとともに、漁具、漁法や生活様式も変化し、
舟屋の使用法も変化しています。


「舟屋 むかし いま 丹後・伊根浦の漁業小史」
和久田幹夫より


例えば、魚網が麻網から化繊網に変わったことで、
化繊網は麻網のように干さなくて良いため、
網を干すための部屋が不要となったようです。
このようなことから、次第に2階部分の倉庫としての役割が減り、
改築をして人が住むようにしたようです。
古い舟屋は基礎が
御影石の二段積や3段積でしたが、
現在は基礎がコンクリート造りとなり、また海側の開口部に
石垣を造り
海水が侵入するのを防ぐなどの改造をしている建物もあります。
舟屋の2階が住居として利用されるようになったことで
増えてきたのが、窓などの開口部の増設です。
またベランダが設けられている舟屋も増加しています。
外観は舟屋ですが、
民宿など他の用途に改造されている舟屋も増加しています。

海岸線沿いに集落は造られています。
そして、村の北側には山が連なっています。
日本海側の冬の海は北風が強く吹き荒れます。
それらを避けるように村は形成されています。

    海岸沿いの伊根の村(グーグル地図)


海から見ると住宅の裏側は山の斜面です。
そして手前の海側には切妻屋根が綺麗に並んでいます。
和瓦屋根材の形状と施工法から考えると
和瓦葺きの場合は海側から風が吹くと
切妻屋根の右側が風に弱い箇所となります。
又、屋根被害の項でお話します。


      伊根観光協会(HPより)


街並みを歩くと、山側には平入の切妻屋根で、
海側には妻入の切妻屋根が並んでいます。
古くは平入が主屋で切妻が漁場への職場棟であったようです。

山側平入、海側妻入の伊根の村(グーグル地図)


「伊根の舟屋」は切妻屋根の弱点を
集団的な集落形態で避ける形で営まれています。
少し寄り道をしましたが、次回は「寄棟屋根」です。


どうもありがとうございました。