ブログBlog

2024.03.16

建物の外部被害に関わる資料 その 42 『 台風21号 ⑫ 』

顧問の坪内です。
いつも池本工務店の事業にご支援頂いてありがとうございます。 

前回にもお話しましたが屋根材の被害を調査するのに重要な事は母体がどの様になっているのかです。
1.
私の予想では台風201821号時の近畿地区屋根材別のシェアは以下の通り程度ではないかと思います。
 ①瓦45%(厚物)粘土・陶器・セメント
 ②スレート30%(薄物)平板スレート・(一部立体スレート)
 ③金属15%(薄物)折版・瓦棒・立平・立体
 ④その他10%(薄物)アスファルトシングル・波板スレート

     屋根材の種類と市場シェア予想(2018年)

2. それでは台風201821号の屋根被害分類項目と数を再度確認します。
 ①屋根材被害(瓦、化粧スレート、金属、アスファルトシングル、波スレート)
   779件《分類比率 62%》
 ②ベランダ・駐車場被害(波ポリカ、平ポリカ)
   148件《分類比率 12%》
 ③建物被害(1階木造、2階木造、2階木造屋根、非木造、神社・仏閣等)
   171件《分類比率14%》
 ④その他(仮設足場、外壁、フェンス・塀、ビニールハウス、野地板、室内、太陽光、アンテナ、シャッター)
   150件《分類比率 12%》   
 ⑤合計 1248件 (4057件からは総数比率30.8)

       台風2018 21号時の屋根種類と被害数

3. さらに屋根材被害(瓦、化粧スレート、金属、シングル、波スレート) 779件《分類比率 62%》や他屋根の内容を深堀します。
 ①瓦(陶器瓦、粘土瓦、セメント瓦【波型・平板】も含む)の被害(35628)
  瓦は古くからの建物に使用されており、被害写真の中で最も多く確認されています。
  瓦は種類・年代等の違いにより施工法が異なることにより台風性能が異なります。
  例えば古いタイプの和瓦の一般部は耐久性の弱い土葺きで施工されています。
  又、古い住宅金融公庫仕様のセメント瓦系は3段毎の釘留めとなっています。
  そして本体施工は左から右へ施工されて、被害の広がりには方向性があります。
  棟部(水平棟、隅棟)は土と番線(銅線)で固定されています。
  ケラバ仕様は釘で固定されている場合と釘と番線(銅線)で固定されている場合があります。
  総量としても、古くから最も多く使用されていますのでこのような結果になっています。
  2000年以降釘留めやビス留めが推奨され今までの施工が中止されています。
  (職人不足・材料不足による復旧遅れ)
 ②化粧スレートの被害(18415)
  昭和35K社より特許製法(水セメント比が低い・比重が高い)のカラーベストとして製造販売されました。
  技術の裏づけや軽量で全面指定釘止め施工の為、地震・台風に強く施工性の良さでシェアーを伸ばしました。
  昭和の終わりから平成の中頃まで主流となり、今でも一定のシェアーを保っています。
  その為、まがい品の商品が出回り一時は10社以上のメーカーが競って同じような屋根材を出しました。
K社以外の商品は製造方法が簡単で抄造製法(水セメント比が高い・比重が低い)と呼ばれるものでした。
  K
カラーベスト以外の商品は耐候性、耐久性が悪く全て撤退しています。
  この屋根材は石綿が使用されていた為、各社は無石綿屋根材の開発ができず撤退した理由もあります。
  現在ではK社とN社の出資によるKMEW1社がカラーベスト系(コロニアル・グランネクスト等)屋根材を販売しています。
  屋根飛散の主な原因は、屋根材本体では無く屋根材端部に使用されている役物と言われている部品です。
  特に水平棟、隅棟部に使用されている棟包板金の飛散です。
  各部の納まり・部材はメーカーでは詳細に試験・経験から検討し仕様を決定しています。
  飛散被害の殆どの原因はメーカー仕様無視のものが多く確認されています。
 ③金属屋根材の被害(21117)
  鉄板屋根は明治時代に西欧から輸入され、英国からの製造技術の進歩により普及しました。
  鉄板屋根の多くは太平洋戦争の戦前、戦後に使用された波板形状トタン板(亜鉛鉄板)です。
  住宅への採用は戦後普及の瓦棒があります。
  平成の中頃から立平と呼ばれるガルバリュウム鋼板(米国特許)が急速に普及しました。
  ジンカリュウム鋼板と称して同じ基材で表面に着色砂を接着した基材もあります。
  工場や非住宅の大型物件の屋根には折板屋根が主流となっています。
  飛散中、後の金属屋根姿は板状の屋根材が塊になっています。
  接合部の形状はかなり強固のようですが、野地板、母屋への固定が不備な事が考えられています。
  確実な施工法が今後の課題として浮き彫りとなっています。
  急速な需要増で職人教育も課題です。(職人不足による復旧遅れ)
 ④波スレートの被害(171)
  古い倉庫や工場・駅舎等に多く使用されています。
  古い材料は化粧スレート系と同じで石綿が入っています。
  製造方法も簡単な抄造製法(水セメント比が高い・比重が低い)と呼ばれるものです。
  棟部、ケラバ部、一般部等、13枚が破損しているものが多く見られます。
  経年劣化により狭小箇所が破損しています。
  経年劣化した屋根へ他箇所からの飛散による被害も多いようです。
(職人不足による復旧遅れ)
 ⑤アスファルトルーフィングの被害(111)
  ほとんどが経年劣化による破損です。
  小片が部分的に飛散したものもあります。
  マンションや高層階の建物は全体的な経年劣化で飛散し、近頃は映像に良く記録されています。
  野地下地や防水シートから剥離しているものもあります。
  経年劣化により表面の着色砂が剥落しているものも多くみられます。
  
(職人不足による復旧遅れ)
 ⑥ベランダ・駐車場の被害(14812)
  ほとんどがポリカボネード本体屋根の飛散が多いようです。
  波板形状の材料は金物やプラスチックで細かく固定されており、
  経年よる本体強度劣化による破損が多いようです。
  平板系の材料は比較的新しいので、経年劣化は少なく飛散しています。
  メーカーによれば本体固定を強めれば構造体のアルミ材が変形破壊する率が高まるそうです。
  今のままの仕様が良いと言えるかもしれない。難しい処です。
 ⑦建物の被害(16913)
  屋根を中心とした画像を分類した残りの写真から、建物全体を撮影したものを、
  木造1階建、木造2階建、木造2階建の屋根、非木造、神社・仏閣等と簡易に分類したものです。
 ⑧その他(仮設足場、外壁、フェンス・塀、ビニールハウス、野地板、室内、太陽光、アンテナ、シャッター)の被害(16413)
  特に仮設足場の倒壊はテレビ等の報道で速報され、一般人も身近なニュースとなっています。
  2024.01.27ブログ 建物の外部被害に関わる資料 その 36 『 台風21号 ⑥ 』
  大阪市西区江戸堀のビル解体工事現場で、解体中のビル壁一面に組まれた足場が、台風201821号の強風に
  おあられて崩壊したお話をしました。

   台風2018 21号時の屋根種類と被害数グラフ


4. 再度これらを円グラフにしてみます。
 ①瓦(セメント瓦も含む)の被害(35628)
 ②)化粧スレートの被害(18415)
 ③金属屋根材の被害(21117)
 ④波スレートの被害(171)
 ⑤アスファルトシングルの被害(111)
 ⑥ベランダ・駐車場の被害(14812)
 ⑦建物の被害(16913)
 ⑧その他(仮設足場、外壁、フェンス・塀、ビニールハウス、野地板、室内、太陽光、アンテナ、シャッター)の被害(16413)


 台風2018 21号時の屋根種類と被害数円グラフ


5. 屋根材の被害(779)分析
  屋根種類被害の比率と現場での採用比率が一致していれば、非常に興味ある数値ですが、
  材料・施工法、職人の施工レベル、劣化の度合いなど不確かなものが多く実態は不明です。
 ①瓦の被害(35646)
  ほとんどが木造住宅の被害のようです。
  ほとんどが陶器瓦・いぶし瓦、セメント瓦の被害で、土葺き施工のものが多いようです。
  ほとんどが経年物件のものが多いようです。
 ②化粧スレートの被害(18424)
  ほとんどが木造住宅の被害のようです。
  ほとんどが水平棟、隅棟部の金属板金の飛散被害が多いようです。
  一般部の被害は、他箇所からの飛来物による破損のようです。
  固定釘の打数不足(手抜き施工)による固定応力不足も多いと思われます。
 ③金属屋根材の被害(21127)
  被害の多数が屋根から剥離して飛散しています。
  飛散した材料がどのように使用されたていたのか分かり難いようです。
  建物が木造か非木造か、住宅か非住宅などが特定できないようです。
  屋根材の広範囲の飛散も多く、野地下地への固定が十分でなかったことが予想されます。
  金属屋根メーカーはこれらの原因を明確に調査する必要があります。
 ④波スレートの被害(172)
  ほとんどが石綿含有の石綿波型スレートで、経年劣化部分と考えられます。
  飛散した箇所での強風圧による破壊で、波型スレート板が部分的に13枚飛散しています。
  他の屋根材と比較して連鎖して飛散していません。
  さらに他からの飛来物によるものも考えられものもあります。
 ⑤アスファルト系シングルの被害(111)
  ほとんどが住宅の被害です。
  報道写真にはありませんが中層マンションでの使用も多いようです。
  ほとんど56枚が部分的に飛散しています。
  広範囲に飛散しているものもある。
  アスファルト系の屋根材は経年劣化による原因が多いようです。
  20数年以上を経過した物件は表面の着色砂の付着性も弱まり、
  基材の繊維質・紙質も弱まり、強風で破損して飛散しています。
  中層ビルの動画映像で飛散している屋根材はアスファルト系のシングルか金属屋根が多いようです。

  台風2018 21号時の屋根材種類と被害数棒グラフ


6. 再度これらを円グラフにしてみます。
 ①瓦の被害(35646)
 ②化粧スレートの被害(18424)
 ③金属屋根材の被害(21127)
 ④波スレートの被害(172)
 ⑤アスファルト系シングルの被害(111)

   
台風201821号時の屋根材種類と被害数円グラフ    屋根材の種類と市場シェア予想(2018年)


7. 私の予想した屋根材別のシェアーと今回の屋根材別被害を比較すると以下の様になります。
①瓦45%(厚物)粘土・陶器・セメント            → 46%
②スレート30%(薄物)平板スレート・(一部立体スレート)   → 24%
③金属15%(薄物)折版・瓦棒・立平・立体       → 27%
④その他10%(薄物)アスファルトシングル・波板スレート    →  3%
その他の野地板被害の写真から飛散状況を考察すると金属屋根と考えられるものがあります。
それらは金属屋根と思われ被害件数を加算すればもう少し結果は変わる可能性もあります。
次回からは具体的に被害写真等を考察してみたいと思います。

ありがとうございます。