2024.04.06
顧問の坪内です。
いつも池本工務店の事業にご支援頂いてありがとうございます。
化粧スレート屋根の被害(184件)の分析です。
軒先部
2件(%)
ケラバ部 8件(%)
一般部 28件(15%)
水平棟部 72件(39%)
隅棟部 84件(46%)
軒先部2件とケラバ部8件の被害はインターネット画像の中では少ない方です。
屋根の平面図から考えますと、軒先部とケラバ部は屋根面の四周部です。
そして軒先部は屋根面では高さが低い部分です。
両部は耐風性能上風圧係数が1.5倍と高くなっています。
しかし、施工仕様の工夫により通常施工で、
被害が少なく対応出来たものがあると思われます。
下図グラフはスレート屋根系の被害の内訳数を棒グラフにしたものです。
スレート屋根の場所別被害数(棒グラフ)
一方、水平棟・隅棟は屋根面の高い部分といえます。
被害もそれなりに多く報告されています。
特に棟端部を納める「棟包」と呼ばれる板金役物の飛散です。
スレート屋根の場所別被害数(円グラフ)
1) 軒先部の被害(2件1%)
今回の報道写真の中では軒先部被害件数は2件です。
写真をよく見ると軒先部部分に近い飛散のものです。
私の飛散算定の方法が少し拘りすぎているかも知れません。
「軒先飛散は」「軒先部の野地板が見えるか、軒先水切りが見えるか」としますと。
の一文があればすっきりとするかも知れません。
そしてこの写真の内容が理解出来ます。
詳細は後述します。
台風201821号時のスレート屋根軒先被害
(インターネット被害写真より)
スレート屋根の被害想定は簡単です。
瓦のように種類や形状は多くありません。
(それでもスレートメーカーや商品によって若干変わります。)
まず瓦の先端から固定釘位置までの距離が決まっています。
1枚の屋根材を4本の釘で固定します。(種類によっては2本の場合もあります)
4本の釘で固定すれば算定風速60m/sに耐えるように設計し易いのです。
これはスレート屋根材の本家(カラーベスト)が発売された昭和35年から一定です。
それに比較し瓦の種類は多く、形状も多く重さも色々あります。
飛散する条件が各々に異なります。
それではこのスレート屋根の納まりは本当に風に強い構造なのでしょうか。
軒板・スレート屋根本体を確実に釘で固定する施工法なのですが。
今回程度の風の強さではどの程度飛散し難い納まりなのでしょうか。
後に他物件の被害例を合わせて紹介しましょう。
2023.07.29 建物の外部被害に関わる資料 その 23 『 速度圧 ① 』
の項でスレート屋根材の台風基準の計算式のお話をしました。
その時のお話をもう一度致しましょう。
昭和47年4月に入社した時に渡されたA4判のダイヤリーの後辺りに技術資料が添付されていました。
営業員はこの「技術資料付の手帳」をカレンダーと共に、年末の挨拶廻りで配るのです。
お役所(官公庁)、設計事務所、建築会社、工務店、工事店、販売店等に
その内容が下記のような速度圧に関する技術資料です。
今考えると何と緻密で地味な営業活動でしょう。
このようにしてスレート屋根(カラーベスト)の風に関する考え方の普及が成されたのです。
参考資料(ダイヤリー)より
コロニアルが風で飛ばされる原因は吸引力によるものと考えられる。
一般部の風力係数は、風上では1.3sinθ―0.5で表す。これは2寸勾配でー0.25となり、勾配が大となれば吸引力は小となり圧力に変わる。風下は勾配に関係なくー0.5であるので風下について検討する。
又、軒先、ケラバ、棟部の風力係数はー1.5である。
速度圧は、q=1204√h h:地上高
で与えられる。2階家は8m以下であるので h=8とすればq=1204√8=201.6=202kg/m2
ここで速度圧 q=60√h を採用すれば
速度圧は、q=60√h h:地上高
で与えられる。2階家は8m以下であるので h=8とすればq=60√8=169.705=169.7kg/m2
コロニアルが発売された昭和35年(1965年)には高層の建物に採用することは考えていなかったので、
一般地域ではq=60√8=169.705=169.7kg/m2
が使用されていた。
屋根が飛散する力
吸 引 力 ・・・・・・PV
コロニアル1枚の受圧面積
0.91×0.182=0.165cm2
一 般 部
PV=202kg/m2×0.5係数×0.165cm2=16.73kg
強風時屋根に掛る応力
釘の引き抜き力・・・・・・T
T=16.73×(141+182)÷182=29.69kg
29.69kg÷4本=7.42kg/本・・・・・・釘1本の引き抜き力
従って屋根釘1本の引き抜き力7.42kg/本以上の野地板を使用
杉 12m/m 48.1kg/本(平均) 9m/m 25.23kg/本(平均)なれば安全でなり。
コロニアルの曲げモーメント
16.73kg×14.1cm=235.89kg/cm
コロニアルの曲げ強さ
曲げ破壊荷重 35.3kg (スパン25cm、巾25cm) ・・・・・・認証値より
25cm巾で M=Wℓ/4=35.5×25/4=220.625kg・cm
91cm巾で M=220.625×91/25=803.075kg・cm
従って発生モーメント235.89kg・cm<803.07kg・cm
抵抗モーメント OK
安全率803.075÷235.89=3.4
軒先、ケラバ、棟部・・・・・・応力は一般部の3倍となる。
釘1本の引き抜き力・・・・・・7.42×3=22.26kg
杉 12m/m 48.1kg/本(平均)はOK、合板 9m/m 25.23kg/本(平均)はギリギリであり、合板12mmを必要とする。
コロニアルの曲げモーメント
235.89×3=707.67kg・cm<803.075kg・cm
安全率 803.075÷707.67=1.135
曲げモーメントはギリギリになるのでケラバはツメ押さえつきケラバ水切金物又接着剤併用部標準施工に準拠されたい。
耐風に関し次の事項を注意し施工することが必要である。
1. 棟部
・笠木の材質を吟味すること
(割れ、大きな節及び腐り等のないこと)
・タルキに必ず釘をきかすこと
・役物鉄板は6尺に付両側10本以上の釘(長45mm程度)にてとめること。
2. けらば部
・ツメ付の役物(クボタ建材標準品)とすること。
・笠木と同様、のぼりよどの材質を吟味すること。
・役物鉄板は6尺に付5本以上の釘(長さ45mm程度)にとめること。
・のぼりよどは下地際タルキに確実に固定すること。
3. 棟コーナー
・棟コーナー役物の両側には5mm程度の折り返しをつけ剛性を増す。
・先端のツメは大きくしコロニアルへのかかりを多くする。
4. コロニアル小巾物
・棟部、下り棟部、けらば部に割り付け上、止むを得ず入る小巾物必ず接着剤にて確実に下側のコロニアルに接着すること。
5. 下地野地板
・必ず実厚12mm以上の板で割れ、大きな節及び腐り等のないものでベタ張りとすること。
以上の事が「ダイヤリー」に記され、「コロニアル標準施工」の普及に努めていたのです。
下記はスレート屋根(カラーベスト)に於けるメーカーの軒先部の納まり図です。
軒先には3本の釘が有ります。
① 軒先役物固定釘
② 軒板固定釘
③ 本体固定釘です。
これらは一応、先の参考資料(ダイヤリー)等よりの計算により算出できます。
計算通りに被害が発生しないのなら何等かの事情が発生した事となります。
諸事情は後述したいと思います。
強風時屋根に掛る応力さて、既存屋根材市場で30%のシェアーを得ていると考えられるスレート屋根材の項に入って来ました。
瓦屋根、金属屋根、アスファルトシングル屋根、波板スレート屋根等の市場は今でもライバルメーカーが何社もあります。
それに対してスレート屋根は現在「KMEW 1社」が日本で製造販売していると聞きます。
もう少しこの屋根材を深堀して見ましょう。
どうも有りがし雨ございます。