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2024.05.11

建物の外部被害に関わる資料 その 46 『 台風21号 ⑯ 』

顧問の坪内です。
いつも池本工務店の事業にご支援頂いてありがとうございます。

金属屋根の飛散被害は他の屋根材に比較して
屋根材自体が風で他の箇所(前面道路、電柱、広場、駐車場等)に飛ばされることが多くあります。
(
もちろん他の屋根材もそのような被害はあるのですが、屋根材自体が塊になっているので良く目立つのです。)
ここでは飛散・破損された屋根そのものの被害数をカウントしていますので、
敢えて他から飛散した屋根はカウントしていません。
このような写真をカウントすれば数がダブル可能性があるので、
後にまとめた形で、別評価として述べたいと考えます。

5.
 金属屋根材の被害箇所(108件)
金属屋根材は瓦、化粧スレートに比較して一般部の被害比率が多くあります。
隅棟の被害は特に少ないように思われます。
金属屋根材で隅棟の被害が少ないのは
寄棟形状に使用されている建物が少ないことが理由と考えられます。
一般部の飛散の多さは飛散した後の
野地板の状態を観察すると分かります。
原因の多くは二つあります。
一つは古い物件で野地下地がバラ板であり、屋根固定保持力が不十分な事です。
和瓦も野地下地はバラ板なのですが、施工法と自重が異なります。
もう一つはたる木を固定している釘位置が濡れて、固定釘が錆びていることです。
濡れた跡や釘の錆びには結露現象の兆候が見られる事です。
スレート屋根や瓦屋根の場合は小屋裏の換気の悪さから
結露発生は野地板全体や隅棟部の場合が多いようです。
金属屋根は素材そのものの熱伝導率が高く
冬季に於ける「放射冷却」の冷え込みが関係しているものと考えられます。

    金属屋根の被害箇所(棒グラフ)

次に多いのは水平棟の被害です。
水平棟被害は化粧スレート屋根と同様に笠木の腐朽が多いようです。
金属屋根の笠木は納まりの問題から乾湿の繰り返しが多く、
木材の腐朽の仕方も「燻製状」で笠木は当初の形が残り、強度の無いものがあります。
「ウナギパイ」のような形をしていて触るとバラバラになるものが多いようです。

     金属屋根の被害箇所(円グラフ)


1) 軒先部の被害(11件10%)
軒先被害の写真ではほとんどの軒部の野地板が腐朽しています。
金属屋根メーカー指導の理想的な軒先納まりには、
唐草固定補助金物を使用するように推奨し納められています。
実際の現場には殆ど使用されていないのが原因の主な理由です。
その為、軒先部が水切り補助材無しの唐草に覆い被さっているだけなので、
風にあおられ易い構造となります。
更に施工法の関係から、先端の隙間から雨水を吸い込み易く、
唐草ジョイントから入水する場合が多くあるのです。

     金属屋根の軒先部被害箇所


金属屋根の勾配が緩い(1~2/100)為、
唐草下端に溜まった水が切れ難く
合板下地からの吸水を誘発しています。
これを解決した唐草役物を販売している役物板金メーカーもあります。

   金属屋根の軒先納まり図 (4寸勾配 )


2) 一般部の被害(46件42%)
一般部の飛散原因は飛散後の野地板状態を観察すると分かります。
古い物件では野地板にバラ板が使用され、
防水紙としてアスファントフェルトが採用されています。
バラ板は経年変化の乾燥により板が収縮し、
アスファルトフェルトも劣化して防水性能が激しく低下しています。
これらは固定釘の保持力に悪影響します。
前述しました、たる木位置や固定釘位置に濡れた跡があり
結露の兆候が確認されます。

     金属屋根の一般部被害箇所①

少し古い瓦棒と近年販売が急速に伸びた立て平葺きの固定方法は異なりますが、
根本的に本体固定の方法よりも職人のモラル(必要釘の本数不足)と
下地劣化(心木結露・小屋裏結露による野地板等腐朽)に問題ありと考えられます。

     金属屋根の一般部被害箇所②


3) 水平棟の被害(31件29%) 
水平棟板金の飛散写真は棟板金固定用の木製笠木が
黒く変色(腐朽)して燻製状態で残っています。
化粧スレート屋根の笠木納まりは屋根面に固定されています。
金属屋根の棟板金は棟頂部の線上に位置しているので、水切れが良いのです。
従って雨水や結露水を含浸させている時間が少ないのです。

     金属屋根の水平棟被害箇所


割と早く乾燥するので腐朽菌が繁殖する期間は短く、
繰り返す期間は永いのではないかと考えら、燻製状態になるのではと思われます。
(
ただし、近年のメーカー推奨納まりは異なる方法で笠木を固定するので、
経年劣化状態も異なると思われます。)
下図の右側は屋根メーカー推奨の納まり図です。
左側は飛散している手抜き工事の納まり図です。
右側には受残、溢止ケミカル面戸、エプロン面戸があります。
左側には受残、溢止ケミカル面戸、エプロン面戸(等)はありません。
どちらも笠木を受けている下地には空隙が多いようです。

     金属屋根の水平棟の納まり図


4) 隅棟の被害(2件2%)
寄棟屋根の被害写真は2件です。
屋根の寄棟形状に使用が少ないのか、被害写真は少ないようです。。
腐朽した笠木の状態は水平棟と同様です。
前述したように全く燻製状態の笠木です。

     金属屋根の隅棟被害箇所


5) ケラバ部の被害(18件17%)
唐草板金固定の納まりはあまり使われていない様です。
唐草の固定は一般の職人さんでは防水を考慮した吊り子留めやハゼ留めです。
ただ近頃のメーカー仕様書も直接野地板に止める構造(脳天留め)になっており、
吊子止めでは無く、ビス止めに成ってきています。
(
ビス止めは水がビスの螺旋に沿って入水するので防水的には不利となります。)
唐草役物固定補助金具を使用すれば完璧ですが、
軒先部と同様に使用されている物件は少ないようです。
近年新しい補助金具を出願しているメーカーもあるようです。
ケラバ部板金を直接留めしている物件は
固定ビスをシーリング補修しています。
(
経年劣化によるシーリング切れ)からの入水は免れません。

      金属屋根のケラバ被害箇所


金属メーカーが推奨しているケラバ部唐草役物固定補助金具の納まり図です。
この唐草役物固定補助金具は野地板下端からの水の吸い込みも防止します。
特に3階建て以上の建物のケラバはこの箇所が弱点です。
ほとんどの板金職人さんはこの役物無しの施工をします。
これからの台風被害が増える理由となります。

       金属屋根のケラバ納まり図


一般的な金属屋根被害の写真でした。
次回は金属屋根の全体的な飛散の写真被害をみましょう。

ありがとうございます。