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2024.10.19

建物の外部被害に関わる資料 その 59  『台風21 ㉙ 』

顧問の坪内です。
いつも池本工務店の事業にご支援頂いてありがとうございます。

前回の続きです。
化粧スレートの隅棟部です。

①写真㋯は化粧スレートの隅棟部棟コーナー納まりの飛散被害です。
②この金属棟コーナー役物被害のある現場はほとんど
  自己流の施工法で行われており、
  メーカー仕様でないものが多いのです。
③標準施工ならば、この被害の状態で屋根材固定用(パッキン付)の釘が
  確認されるはずですがここにはありません。
④メーカーの隅棟コーナー標準施工法を参考に上記写真を検証してみます。

㋯台風21号被害写真(化粧スレート・隅棟部)より


⑤下図はメーカーの隅棟コーナー納まり施工図です。
⑥この施工法の特徴は左右の本体葺き足が揃う事です。
⑦従って、本体施工は同時に先端を揃えた形でカットします。
⑧又棟コーナー役物が飛散しないよう2本の釘で固定します。
⑨この時棟コーナー板金はカットされた化粧スレート本体の間に差し込みます。

   KMEWカタログの隅棟コーナー施工法


1 隅棟芯を出す為に墨を打ちます。
2 ⓶隅棟芯に合わせて屋根材を切断し施工します。
3 ⓷屋根材の小幅物は、屋根釘と接着剤を併用して施工します。
4 ④屋根材施工後、隅棟部の屋根材から80mm
     隅棟芯から40mmの位置にドリルで先孔をあけます。
5 ⑤棟コーナーが曲がらないようにするため、隅棟芯の両側に
     棟コーナー片面幅(70mm)位置に墨打ちします。
6 ⑥1段目の棟コーナーは、棟コーナーの先端を軒板と1段目屋根材の両方に
     引っ掛けて、2段目の屋根材の下に差し込みます。
7 ⑦棟コーナーは、棟コーナー固定釘2本で、
     棟コーナーと2段目屋根材とを一緒に下地(隅木)に固定します。
8 ⑧強風地域、強風場所では、
     隅棟芯から50mm程度離れた位置にシーリングします。
⑪下記写真で④で先孔を空け、⑦で棟コーナーを同時に固定すれば
  耐風性能は各段に高まるのです。
⑫専用釘を使用する事で、釘穴もシールされ、棟コーナーの隙間も
  毛細管現象を阻止する隙間となるのです。


㋱台風21号被害写真(化粧スレート・水平棟部)より


ここで古い計算式を使って、この施工法の台風計算をしてみましょう。
1972
年には q=60h とともに
ベルヌーイの定理(空気密度を勘案して) q=v
2/16 を使用していました。
そこでこの箇所に風速60m/sの風が吹いたと仮定すると
この棟コーナー役物の面積は 7×2×18.2×1.4142×0.95=342.32cm2 となります。
面積は 1m2/342.32cm= 1/29.21倍となります。
風速60m/sの風圧力は 60×60/16=225kgf/m2 風圧係数を1.5倍として 225×1.5=337.5kgf/m2となります。
棟コーナーに掛かる風圧力は 337.5/29.21=11.55kgf/枚 となります。
この棟コーナーを2本の釘で留めますので、1本当たりに掛る力は 5.77kgf/本 となります。
通常この釘は1本当たり50kgf/以上の保持力があり、はるかに安全と言えます。
ただ実際にはこの釘で周囲のカラーベストを押さえる力も要しますので、
幾らかの安全率は落ちます。
ここでもう一度、化粧スレート屋根の被害(184)の分析をみてみます。
下記は 2024.04.06 に書いたブログです。
建物の外部被害に関わる資料 その 44 『 台風21号 ⑭ 』
には下記のような分析があります。
軒先部     2(1%)
ケラバ部     8(4%)
一般部     28(15%)
水平棟部   72(39%)
隅棟部     84(46%)

ここで棟の被害は水平棟と隅棟を合わせて156件の(85%)となります。
棟の被害が少なくなるとひょっとして台風被害の少ない
屋根材と言うことになります。


   ㋲スレート屋根の場所別被害数(円グラフ)


3. 金属屋根(軒先、けらば、一般部、水平棟、隅棟)の被害
1)
 金属屋根材が飛散中の写真です。
①写真㋳は金属屋根材の飛散中の被害です。
②この写真は金属板が強風で舞い上がり、同時に下地の防水シートも飛散しています。
  (防水シートが飛散しているのは固定釘・ビスが抜けていることが考えられます。)
③金属屋根材の固定が問題であろうと思われます。
④設計基準を上回った風が吹いたというよりは、
 野地地への固定方法か、野地下地の結露による劣化等が考えられます。
⑤飛散している屋根材は幾らかの断片に分かれています。

㋳台風21号被害写真(金属屋根・飛散中)より


⑥写真㋴も金属屋根材の飛散中です。
⑦金属屋根材が電線に当たり、電線がショートして火花が散っています。
⑧上記写真と同様に、防水シートも同時に飛散しています。
⑨飛散している屋根材は幾らかの断片に分かれています。

㋴台風21号被害写真(金属屋根・飛散中)より


2) 金属屋根材が飛散後の写真です。
①写真㋵は大型物件・非住宅建物の金属屋根材飛散後の被害です。
②屋根から布のように地上に垂れ下がった状態で止まっています。
③屋根材の種類、形状、固定方法は定かではありませんが、
  鉄骨母屋への固定が不十分であったと思われます。
④屋根材が瓦棒であるなら構造上おそらく芯木無し施工と思われます。

㋵台風21号被害写真(金属屋根・飛散後)より


⑤写真㋶は2階建て住宅の金属屋根飛散被害です。
⑥飛散した屋根材は電線に引っ掛かって止まっています。
⑦屋根材の接合部はしっかりと留まっているようなので、
  下地への固定が問題であったと考えられます。
⑧屋根材が瓦棒であるなら構造上おそらく芯木無し施工と思われます。


㋶台風21号被害写真(金属屋根・飛散後)より


⑨写真㋷も飛散した金属屋根材が電柱に巻きついています。
⑩電柱の横には2階建ての事務所が有ります。
⑪金属屋根接合部は激しく錆びているのが確認されます。
⑫屋根材の裏面が激しく錆びている見えます。
⑬おそらく野地板面が結露していたと思われます。


㋷台風21号被害写真(金属屋根・飛散後)より


これらの写真は施工法の「屋根材の固定方法」と
固定治具廻りの強度にあるように思えます。
もう少し踏み込んで考えたいと思います。

ありがとうございます。