2025.03.31
顧問の坪内です。
いつも池本工務店の事業にご支援頂いてありがとうございます。
前回『金属屋根の被害・軒先・ケラバ部』の続きです。
6) 水平棟の被害
写真Ⓨ-1は金属屋根材の水平棟部の被害です。
ここでは通常の棟部被害状況を説明して見ましょう。
①金属屋根(瓦棒)棟役物が捲れています。
②瓦棒の芯木のピッチは450mmピッチです。
③棟役物固定用木材(以降は笠木)が腐朽しています。
④棟役物飛散の原因は笠木の腐朽により、
笠木固定釘の保持力が低下し外れてしまったようです。
⑤瓦棒葺きの棟部には笠木下の位置に埃が確認されるので
常時雨水による吹き込みは無かったと考えられます。
⑥この時笠木は450mmピッチにある芯木に固定され
屋根面より浮いた状態です。
⑦この物件は30年以上前に施工され、
何度か再塗装されたように観察されます。
Ⓨ-1破損した棟包(台風21号被害写真より)
ここで「建築基準法」の金属屋根材(瓦棒)の棟納まりを見て見ましょう。
今では瓦葺きの用語である「面戸」とよばれている箇所の説明です。
①この納まりのポイントは瓦棒の溝板部と棟板金の取り合いです。
②右側の納まりが「通し付け子を用いる納まり」、
Ⓨ-2「建築基準法」金属屋根工事の棟部
③前項の写真の青色四角の箇所を拡大して見ます。
・ⒶとⒷは同じ箇所で、風による力で持ち上がって離されています。
・この箇所に風が作用すると空洞であるため
考えられない異常な力が働いた可能性もあります。
・Ⓐの赤色丸箇所は棟包みを加工して、芯木への被せと、
溝板部から笠木部下への雨水防止を加工して垂れがあるのが分ります。
・いわゆる、「面戸」とよばれている箇所の加工です。
④Ⓑの赤色丸箇所は色々な事が分かります。
・芯木上の埃の堆積で棟包役物の加工をして被せが有ったことが確認出来ます。
(平常時には雨水が入っていないことが溝板部の埃堆積跡で確認されます。)
・ホコリのある溝板部上部の笠木は褐色の燻製化しているように確認されます。
・この部材は殆ど耐力がなくなっており、どようなメカニズムで出来上がるか興味のある処です。
次の写真でも同様な状態で撮影されています。
・笠木を芯木に固定した箇所が腐朽し酷くなっています。
(冬季の放射冷却で釘箇所が結露しているのではと思われます。)
・この箇所は他の箇所よりも結露水が多く、腐朽進行が活発なのかも知れません。
・溝板棟隅では板金が「八千代折り」してあり、防水効果が確認されます。
(さらに頂部は水返しを付けるようにも指導されています。)
Ⓨ-3破損した棟包(台風21号被害写真より)
・八千代折は一枚の板から「ハサミの切込み」を入れないで、
「箱状の角」を造る作業で、雨漏り防止には最適な方法です。
・近年は職人技術レベル低い者たちは、ハサミとシーリングでの使用が増え
経年での雨漏りが心配な現場が増加しています。
Ⓨ-4「建築基準法」金属屋根工事の八千代折り
Ⓨ-5破損した棟包(台風21号被害写真より)
木材腐朽菌が発生する原因
木材腐朽菌の発生には、栄養・温度・水分・空気の
4つの発生条件がそろう必要があります。
逆にひとつでも条件を欠くと、木材腐朽菌は発生しません。
1.栄養(木が腐る」ということは、菌(腐朽菌)が木材の成分を分解して養分とすることです。)
2.温度(木材腐朽菌は、30℃前後が最も発育に適しており、3℃以下の環境では発生しにくくなります。)
3.水分(大気中の湿気が多く木材の含水率が20%以上になると発生しやすく、20%を下回ると発生しにくくなります。)
4.空気(腐朽菌は空気がないところでは発生しません。水中に浸かった木材が腐朽しないのはこのためです。)
➇写真Ⓨ-6も金属屋根材の水平部の被害です。
⑨この写真は金属棟役物が捲れて、飛散したものです。
前項と同様に笠木が腐朽しています。
⑩この条件で木材が腐朽するほどの水分を保持しているのは結露のせいです。
⑪なぜならこの木材は常時雨に晒される構造になっていないからです。
⑫そうです、この木材は何れも芯木の上に留めてあるからです。
⑬もう一つ気になることは、通常の笠木(18×90)は使用されていないことです。
⑭化粧スレートの項にもありました壁用の胴縁(15×45)を2本使いです。
(そもそもこの様な材料を採用する工務店、板金屋は技術レベルの低く信用されません)
⑮さらにこの箇所には「面戸」とよばれている被せがありません。
(笠木の下にはホコリが入り込んでいるのが確認されます。)
⑯芯木上の埃の堆積で棟包板金を加工せずに被せていることが分かります。
(雨の時雨水が吹きぶって、入っているのではないかと推察されます。)
⑰4本の胴縁の腐朽具合を見ると頂点部と両端部に分かれるように確認されます。
(則ち両端部が良く腐朽しています。面戸がないのが影響しているのでしょうか。)
Ⓨ-6破損した棟包(台風21号被害写真より)
7) 隅棟の被害
①写真Ⓨ-7は金属屋根材の隅棟部の被害です。
②この写真は水平棟と同様に棟板金が飛散しています。
③しかも2本の棟とも軒先に近い箇所、正面から風が吹いたのでしょうか。
④笠木が結露して棟板金が飛散しています。
⑤笠木は水平棟と同様な全体的に燻製状態で腐朽しています。
➅2本の笠木の腐朽具合は同じ様に観察されます。
Ⓨ-7破損した棟包(台風21号被害写真より)
⑦写真Ⓨ-8も金属屋根材の隅棟部の被害です。
➇こちらの笠木は余り腐朽は進んでいません。
⑨写真Ⓨ―7よりも経年の年数が少ないのでしょうか。
⑩それとも下地の造りや板金の納まりが良いのでしょうか。
⑪水平棟の笠木は化粧スレートの時と同様に
頂上部から結露で腐食が始まっています。
Ⓨ-8破損した棟包(台風21号被害写真より)
さて隅棟の納まりはどの様になっているのでしょうか。
笠木に対する風の影響を考えると釘を下地に確実に止めるので、
芯木に笠木を固定すると考えピッチが300mmなら1.414倍で424.2mm
芯木ピッチか450mmなら636.3mmとなります。
従ってこの図の中には笠木を固定するための桟木が必要となります。
Ⓨ-9「建築基準法」金属屋根工事の隅棟部
今回は金属屋根の古いテイプ「瓦棒」の飛散が主でした。
近年流行って来た「立平」タイプはどうでしょうか。
興味のある処です。
ありがとうございました。