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2025.04.17

建物の外部被害に関わる資料 その 64  『台風21 号 ㉞ 』

顧問の坪内です。
いつも池本工務店の事業にご支援頂いてありがとうございます。

前回までは『金属屋根の台風被害』のお話をしました。
今回はアスファルトシングル被害のお話です。
このレポートは2018年の台風21号の風被害のお話です。
屋根材の中で比較的風に弱いと言われている
「アスファルトシングル」の被害を探すとそんなに多くは無いのです。
それは、アスファルトシングル屋根材被害その物の飛散写真が少ないからです。
ここで台風21号のアスファルトシングル被害を振り返ってみます。
台風201821号被害のインターネット掲載写真被害は4057件でした。
屋根材の被害総件数は779件あります。
その中でアスファルトシングルの被害件数は11件です。


Ⓩ-1台風201821号時の屋根材種類と被害数棒グラフ


これを百分率の円グラフで表しますと。
 ①瓦の被害(35646)
 ②化粧スレートの被害(18424)
 ③金属屋根材の被害(21127)
 ④波スレートの被害(172)
 ⑤アスファルト系シングルの被害(111)


Ⓩ-2台風201821号時の屋根材種類と被害数円グラフ


⑤アスファルト系シングルの被害(111)ほとんどが住宅の被害です。
 ・報道写真にはありませんが中層マンションでの使用も多いようです。
 ・ほとんど56枚が部分的に飛散しています。
 ・劣化して広範囲に飛散しているものもあります。
 ・アスファルト系の屋根材は経年劣化による原因が多いようです。
 ・20数年以上を経過した物件は表面の着色砂の付着性も弱まり、
  基材の繊維質・紙質も弱まり、強風で破損して飛散しているようです。
 ・中層ビルの動画映像で飛散している屋根材はアスファルト系のシングルか、
  金属屋根系が多いようです。


1) 軒先の被害・ケラバ部の被害
①写真Ⓩ―3アスファルトシングルの軒先部・ケラバ部の被害です。
②隅部角の一枚は以前飛散したような現象が確認されます。
③他の2枚は固定用の接着剤跡は確認できないので、
 当初から接着剤併用施工法がなされていない不良施工と考えられます。
④このような被害は風が右側の隅部角方向から吹いたと推察されます。


Ⓩ―3破損したアスファルトシングル軒先・ケラバ部
    (台風201821号屋根被害より) 


⑤写真Ⓩ-4もアスファルトシングルの軒先部・ケラバ部の被害です。
➅この写真は風洞試験切妻タイプ屋根形状のケラバ角からの
  台風被害の状況そのものです。
⑦基材は経年劣化による強度低下ものと思われます。
➇ところがこの現場の写真を確認すると
 既にテープで補修してあるのです。


 
Ⓩ―4破損したアスファルトシングル軒先・ケラバ部
        (台風201821号屋根被害より)


アスファルトシングルにはケラバ部の納まりは2種類が有ります。
ケラバ水切りの形状によるものです。
風に強い納まりと少し工夫の必要なものです。
下図Ⓩ―5は前述写真Ⓩ―3の納まりです。
ケラバの爪で覆われた箇所は飛散せずに残っています。
同様な被害は化粧スレートのケラバ部でも見られました。

   Ⓩ―6破損したアスファルトシングルケラバ部納まり


2) 一般部の被害
①写真Ⓩ—7はアスファルトシングルの一般部の被害です。
②この写真にはシングル固定釘や併用接着剤の跡も確認されます。
③全体的な基材劣化が考えられます。
④下地防水シートは剥がれずに完全に残っています。
⑤この施工では防水シートまでの施工は完璧であることが確認されます。


      
Ⓩ―7飛散したアスファルトシングル一般部

        (台風201821号屋根被害より)



⑥写真Ⓩ-8アスファルトシングルの一般部の被害です。
⑦下地防水シートは剥がれずに完全に残っていますが、
  アスファルトシングル本体はかなり劣化して剥がれています。
⑧アスファルトシングルの表面も凸凹が発生しています。
⑨このような劣化は冬季の低温、夏季の高温での
 温度変化によるものと考えられます。
⑩他の屋根材に比較して下地防水シートがしっかりしていますのは、
  アスファルトシングルメーカーが防水シートメーカーであることに起因しているかも知れません。


   
Ⓩ―8破損したアスファルトシングル一般部

       (台風202821号屋根被害より)



4) 水平棟の被害
①写真Ⓩ-9はアスファルトシングルの水平棟部の被害です。
②屋根面全体が劣化して、棟部も劣化していると思われます。
③表面の砂化粧の脱落もかなり酷いようです。
④後付け接着剤の塗布箇所が確認出来る程劣化しています。
⑤煙突、アンテナの再塗装から考えるとメンテナンスは
  しっかりと成されている現場の様です。
➅特に左側の棟部はすっかり剥がされてるようです。


    
Ⓩ―9破損したアスファルトシングル軒先・ケラバ

   (耐風21号屋根被害より)



5) 隅棟の被害
①写真Ⓩ-10はアスファルトシングルの隅棟部の被害です。
②この写真では隅棟の同質アスファルトシングル役物が剥がれています。
③釘の位置は確認出来ますが留め付け本数が少ないように思えます。
④接着の跡は確認されますが、劣化して剥がれていようです。
④又接着の箇所も少ないようにも思われます。

 
    Ⓩ―
10破損したアスファルトシングル軒先・ケラバ

    (耐風21号屋根被害より)


インターネットではアスファルトシングルの普及に関して多くの情報が流れています。
アスファルトシングルも50年以上前から日本で販売されています。
施工は昔からアスファルト防水工事店が行っていますので素人では無理です。
特に危険な屋根上での作業は危険で、余分な砂がバラバラと落ちるのが気になります。
やはり専門業者にまかすのが良いと思います。
それでは。

ありがとうございます。