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2025.07.18

建物の外部被害に関わる資料 その 70  『台風21 号 ㊵ 』

 顧問の坪内です。

いつも池本工務店の事業にご支援頂いてありがとうございます。

前回のSM小学校体育館でのR金属屋根被害の拡大写真をもう少し詳しく検証してみましょう。
 ①どうやら、屋根下地野地は断熱材として
  木毛セメント板が使用されているようです。
 ②木毛セメント板の繋ぎジョイントにアルミニュウムのジョイナーが
  採用されているのが確認されます。
 ⓷更にこの木毛セメント板は(3尺×6)サイズが採用されています。
 ④下地鉄骨C型鋼はこの木毛セメント板の中央部と両側にあります。
 ⑤従って、C型鋼に固定されています木毛セメント板を考えると、
  C型鋼のピッチは910mmと考えられます。
 ⑥通常の考え方であれば、TO小学校体育館の場合のように、
  木毛セメント板固定下地のC型鋼間隔は606mmではないかと思われます。
 ⑦又、この木毛セメント板の上に防水シートが確認されるのですが、
  それも見られないように思われます。


     台風201821号屋根被害写真


  ⑧この写真の左側直ぐ横の瓦棒屋根が捲れて、
  屋根材板金の裏側の写真を確認することができます。
 ⑨この写真にも防水シートらしきものの付着は確認されません。
 ⑪又、瓦棒固定用の「吊り子金具」も確認できません。
 ⑫それではこの物件は「通し吊り子金物」を
  455mm×900mmで固定していたのでしょうか。
 ⑬その「固定ボルト」か「固定ビス」が風の力で、抜けた事になります。

     
台風201821号屋根被害写真


1.前回は金属屋根瓦棒に於ける「スプリングバック」と下地止付け用「吊り子金具」について学びました。
瓦棒屋根の「心木無し施工」1950年頃に売り出されて数々の施工法が考えられたと思われます。
当初は金属の「通し吊り子金物」が設計されていたので、今回のR金属屋根での屋根飛散被害は
どのように施工されていたか気になるところです。
T市のO小学校体育館は「吊り子金具」です。
S市のM小学校体育館は「通し吊り子金物」
 何れも固定は鉄骨のC型鋼への止付けです。
⓷台風201821号屋根被害の本題とは少し外れますが、
 下図は台風201915号の通過位置と周辺地点の
 最大瞬間風速を記した関東地区の地図です。
④通過地点周辺に「4550m/s」の地点が点在しています。
⑤今回、問題としているCN小学校体育館は赤星印の箇所です。
⑥その少し南側にはC(50m/s以上)近郊で
 最も風速が高かった地点57.5m/sがあります。
⑦この地図から確認すると 一般的に言われている台風の目の右側に
 強風地域があるのが分かります。
⑧今回問題としているCN小学校体育館はこの地点から
 最も近かった観測地点では2025m/sだったようです。

台風201915号瞬間最大風速観測地点(ウェザードニュース)



     ⑨この様に台風の通過地点の東側に風が強い地点がある事は分かりました。
  ⑩そして各地点毎にそれぞれに風速が異なることも分かります。
  ⑪先のSM小学校体育館と近隣の中層マンション、その南側の2階建て住宅の
   屋根被害有無比較に於いても実質その地点での風速は不明な訳です。
  ⑫グーグル地図のCN小学校体育館には風は南方向から
   北北東に向かって吹いたようです。
  ⑬この物件も遮るものが何もない
   南側に位置するグランドの影響が考えられるのです。

       グーグル衛星写真


 ①インターネットに掲載されている写真を観察すると後側(南西面)からの風で捲れたようです。
 ⓶従って、金属屋根の裏面が大きくこちら側に捲れています。
 ⓷この建物は北西から東南方向にかまぼこ型R金属屋根になっています。

     
台風201915号屋根被害写真


  ④「瓦棒葺き」と言われる施工は金属が谷部と山部に分かれており、
   和瓦施工で言えば本瓦葺き施工と言えるものです・
  ⑤瓦施工の谷瓦が「溝板」で、棟瓦が瓦棒包板となります。
  ⑥瓦棒包板を固定するのに「心木」と呼ばれる固定木が取り付けられています。
  ⑦以前にも学びましたがこの木製「心木」が無いものを
   「心木無し構法」と呼び画期的な施工と言われたのです。
  ⑧「心木」は木製なので昔から結露や雨水で腐朽し易く、
    3040年経過した建物では固定強度が無くなっています。
  ⑨旧瓦棒心木施工ではこの心木に金属吊り子を固定し、
   更に「瓦棒包板」を固定していました。
  ⑩更に近年になっては「溝板」を立上げ「心木」を
   「瓦棒包み板」で挟んで横から釘で固定しました。
  ⑪手元に山下愼司「建築をめぐる話」があり、銅板による納まりの
   瓦棒の項を見ると下図のように記してあります。
  ⑫心木あり施工の吊り子の使い方から少し高級な施工は
   見た目も重視していたことが良く分かります。
  ⑬江戸時代の飾り職人が明治時代になって仕事が少なくなり、
   金属屋根職人になったとかと聞きますと、拘りを引き継いでいるような気もします。

 山下愼司「建築をめぐる話」著から引用


 
CN小学校体育館の屋根被害を少し北側から観察します。
 ②屋根は南側の半分以上が捲れて、東側の立樹に覆い被さっています。
 
③おそらく金属吊り子を使用した「心木無し」施工と思われます。
 ④溝板と溝板の間には「通し吊り子」が確認されます。

     台風201915号屋根被害写真


  ①おそらく同じ屋根を解体されている千葉の
   「作新建装」様の写真を参考に見せていただきます。
  ②無断で学習に使用する事をお許し下さい。
  ③12日して、立樹に覆い被さっていた金属屋根の一部が撤去されています。
  ④しかしながらまだR大屋根頂部に位置する溝板部等はそのままです。
  ⑤ただ屋根野地板は乾燥した部材が残っているようにも見えます。
  ⑥左下の小さな小屋にはブルーシートが掛けてあります。
  ⑦その横には落下した金属屋根の塊があります。
  ⑧今は被害の状態を調査している段階なので、
   この破損金属屋根の撤去には立派な足場も必要です。
  ⑨部品飛散・落下防止のための安全シートも必要です
  ⑩撤去計画や新規屋根材の施工計画等新築で計画するより気を使うはずです。
  ⑪特に気になることはこの屋根材の施工を含めた飛散の原因です。

台風201915号ある体育館解体工事(作新建装HP)


  ①金属屋根材の飛散した詳細が良く確認できます。
  ②やはり金属吊り子を使用した「心木無し」施工と思われます。
  ⓷そして溝板と溝板の間には「通し吊り子」が確認されます。
  ④下の写真赤色四角部では赤色線部上と赤色破線部上には
   留め付けビスが確認されます。
  ⑤本当に貴重な資料です。
  ⑥このような貴重な作業をされている現場に赴いて、
   金属屋根の台風被害の実態を調査できたらと考えます。


     
台風201915屋根被害写真


⑥もう少し詳しく写真を検証してみましょう
台風と屋根材被害については終わることのない作業です。
正しい理論に基づいた施工が出来るかが大きな課題と言えます。


ありがとうございます。