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2025.10.28
建物の外部被害に関わる資料 その 74 『台風10 号 ③ 』
顧問の坪内です。
いつも池本工務店の事業にご支援頂いてありがとうございます。
このS市温水ﾌﾟｰﾙ体育館の現場で、飛散した屋根の大きさが
「約２０ﾒｰﾄﾙあるﾄﾀﾝ屋根が８枚ほど剥がれ落ちました」
と表現されていました。
形状は「 S金属社のｶｰﾋﾞﾝ形状 」に似ているものです。
この形状は正確には現在の商品で、S市の体育館に使用された物とは異なります。
製造ﾒｰｶｰは数々の経験を経て現在はこの形状になっているので
現在の商品が今回のような台風で飛散被害に合うとは限りません。
S社のｶｰﾋﾞﾝ形状屋根(S社ｶﾀﾛｸﾞより)
今日ではR形状の屋根でも、単にｶﾏﾎﾞｺ型屋根以外の建物が多くあります。
建築家が作り出す大型建物にはさまざまなﾃﾞｻﾞｲﾝがあります。
変形したR形状の屋根を連続して並べて
従来の単純な形の設計から、うねるような波型のものまで
金属屋根は陶器瓦やｽﾚｰﾄ屋根とは異なるﾃﾞｻﾞｲﾝに貢献します。
それらを施工図へ展開するのは結構工夫が必要で、
簡単なものではないと思われます。
S社のｶｰﾋﾞﾝ形状屋根(S社ｶﾀﾛｸﾞより)
美しい曲面ｱｰﾁ形状を金属屋根で表現し
Ｒ加工を行うことによって金属特有の物理的性質を
制御するために新しい手法が必要です。
日本の気候(温度と湿度)に左右される木造建築の場合は
木造の伝統的納まりとしては(ﾆｹﾞ・ﾁﾘ・ｱｿﾋﾞ等)がありました。
温度変化に弱い金属屋根の場合はどうでしょうか。
金属の連続性を有効にする為、溶接と接合部の納まりにより
(ﾋｽﾞﾐ・ﾖｼﾞﾚ・ｱﾊﾞﾚ等)を吸収し下地に固定する必要があります。
伝統的には銅板ﾊｾﾞ葺き等があります。
私は金属屋根の専門家ではありませんので、
これらの固定法はﾒｰｶｰに任せて納まり資料を参考にさせて頂きます。
曲面対応水切りにて、ﾊｰﾊﾞｰｽﾞｽﾄﾛﾝｸﾞﾙｰﾌ湾曲ﾀｲﾌﾟがあります。
S社のﾊｰﾊﾞｰｽﾞｽﾄﾛﾝｸﾞﾙｰﾌ屋根(S社ｶﾀﾛｸﾞより)
さて飛散したS市体育館の屋根ですが、溝板に横溝が付いており
R 形状ｶﾏﾎﾞｺ型屋根には容易な型となります。
ただ今回の飛散被害状態の写真を確認すると
屋根材の縦側接合部が外れており、各々単独で蛇形状になってます。
私の故郷の祭りに神社に奉納する『石見神楽』の
「ﾔﾏﾀﾉｵﾛﾁ」のようにくねって飛散しています。
おそらく通常の固定法では解決できない別の力が
働いた可能性もあります。
「長崎文化放送」の掲載写真
『石見神楽』は島根県西部の
石見地域で演じられる神楽のことです。
その由来は古く、平安末期から室町時代に
石見地方一円で、農耕神的なものとして
村々に祀られている行事です。
各々の集落での神の行事が原型と言われています。
「ﾔﾏﾀﾉｵﾛﾁ」はその中の花形演目で、
多くの神楽上演において最終演目として披露されています。
日本神話におけるｽｻﾉｵ尊の八岐大蛇（ﾔﾏﾀﾉｵﾛﾁ）退治を
題材とした内容の舞いが見られます。
数頭の大蛇がｽｻﾉｵ尊と大格闘を繰り広げる壮大なｽｹｰﾙなのです。
私の故郷の神社でも秋祭りには良く行われていました。
その時の終わりの「ﾔﾏﾀﾉｵﾛﾁ」の姿が
このR型金属屋根飛散に良く似ているのです。
「島根観光ﾅﾋﾞ HP」より
明治時代までは鱗を描いた白衣をきていたそうです。
舞手であり神官でもあったU氏が大蛇を、
吊り下げ式の提灯に着想を得て、
現在の蛇腹式胴体を開発したとされています。
石州和紙と竹のみという軽量な造りで、
自在に伸縮しのたうつ蛇胴を表現し、
舞に説得力を持たせることに成功したようです。
大蛇が数頭登場するようになったのは戦後で、
それ以前は原則一頭のみで、
戦後しばらくの間も最大二頭の登場だったらしいのです。
(私が見たのは二頭だったような気がします)
「島根観光ﾅﾋﾞ HP」より
さて上記表現の「軽量な造りで、自在に伸縮し」が
今回の屋根の飛散のﾎﾟｲﾝﾄになるのではないかと思われます。
少なくとも、東側の有明海側から吹いた強風で
左右の嵌合部も外れてしまっています。
写真は海より反対側(西側)の下地C型鋼に
固定されていたﾎﾞﾙﾄ周辺部がかなり錆びています。
そして屋根材には通常の平板屋根材とは異なる
「蛇腹状のﾘﾌﾞ」が施されています。
この材料の形状は材料を(ﾋｽﾞﾐ・ﾖｼﾞﾚ・ｱﾊﾞﾚ等)から
吸収し易いようにと考えられた考えが別の要因となって
被害をもたらしたのかも知れません。
「長崎文化放送」の掲載写真
下の写真は少しﾎﾞｹていますが、
赤色四角部分を拡大したものです。
ﾎﾞﾙﾄ固定箇所に錆が多く発生しているのが確認されます。
おそらく、海側の下地はもっと酷く錆びて
破断しているものと思われます。
「長崎文化放送」の掲載写真
少し気ななる事に下の写真はこの体育館を西側から見た
2022年5月のｸﾞｰｸﾞﾙﾋﾞｭｰです。
赤色四角の箇所を拡大して見ると⇒の箇所が
少し濃いい屋根となっています。
気のせいなのか、ﾋｮｯとして過去にも同じ箇所が
強風被害に合って修理したのかも。
などと考えてしまいます。
ｸﾞｰｸﾞﾙﾏｯﾌﾟｽﾄﾘｰﾄﾋﾞｭｰ(S市体育館2022年5月)
同じように2025.年2月のｸﾞｰｸﾞﾙﾋﾞｭｰを見ると
R型金属屋根がすっかり撤去されている写真です。
屋根は修理されなくて、
他の場所への移転が決定していたようです。
ｸﾞｰｸﾞﾙﾏｯﾌﾟｽﾄﾘｰﾄﾋﾞｭｰ(S市体育館2025年2月)
いろいろと勉強になったS市の体育館屋根でした。
ところでこの台風10号被害では
もう一つ大きな事件が発生しています。
それは宮崎に於ける「竜巻」です。
「竜巻」については以前でお話しました。
次回は台風に伴う「竜巻」について少し学んでみましょう。
ありがとうございます。
いつも池本工務店の事業にご支援頂いてありがとうございます。
このS市温水ﾌﾟｰﾙ体育館の現場で、飛散した屋根の大きさが
「約２０ﾒｰﾄﾙあるﾄﾀﾝ屋根が８枚ほど剥がれ落ちました」
と表現されていました。
形状は「 S金属社のｶｰﾋﾞﾝ形状 」に似ているものです。
この形状は正確には現在の商品で、S市の体育館に使用された物とは異なります。
製造ﾒｰｶｰは数々の経験を経て現在はこの形状になっているので
現在の商品が今回のような台風で飛散被害に合うとは限りません。
S社のｶｰﾋﾞﾝ形状屋根(S社ｶﾀﾛｸﾞより)
今日ではR形状の屋根でも、単にｶﾏﾎﾞｺ型屋根以外の建物が多くあります。
建築家が作り出す大型建物にはさまざまなﾃﾞｻﾞｲﾝがあります。
変形したR形状の屋根を連続して並べて
従来の単純な形の設計から、うねるような波型のものまで
金属屋根は陶器瓦やｽﾚｰﾄ屋根とは異なるﾃﾞｻﾞｲﾝに貢献します。
それらを施工図へ展開するのは結構工夫が必要で、
簡単なものではないと思われます。
S社のｶｰﾋﾞﾝ形状屋根(S社ｶﾀﾛｸﾞより)
美しい曲面ｱｰﾁ形状を金属屋根で表現し
Ｒ加工を行うことによって金属特有の物理的性質を
制御するために新しい手法が必要です。
日本の気候(温度と湿度)に左右される木造建築の場合は
木造の伝統的納まりとしては(ﾆｹﾞ・ﾁﾘ・ｱｿﾋﾞ等)がありました。
温度変化に弱い金属屋根の場合はどうでしょうか。
金属の連続性を有効にする為、溶接と接合部の納まりにより
(ﾋｽﾞﾐ・ﾖｼﾞﾚ・ｱﾊﾞﾚ等)を吸収し下地に固定する必要があります。
伝統的には銅板ﾊｾﾞ葺き等があります。
私は金属屋根の専門家ではありませんので、
これらの固定法はﾒｰｶｰに任せて納まり資料を参考にさせて頂きます。
曲面対応水切りにて、ﾊｰﾊﾞｰｽﾞｽﾄﾛﾝｸﾞﾙｰﾌ湾曲ﾀｲﾌﾟがあります。
S社のﾊｰﾊﾞｰｽﾞｽﾄﾛﾝｸﾞﾙｰﾌ屋根(S社ｶﾀﾛｸﾞより)
さて飛散したS市体育館の屋根ですが、溝板に横溝が付いており
R 形状ｶﾏﾎﾞｺ型屋根には容易な型となります。
ただ今回の飛散被害状態の写真を確認すると
屋根材の縦側接合部が外れており、各々単独で蛇形状になってます。
私の故郷の祭りに神社に奉納する『石見神楽』の
「ﾔﾏﾀﾉｵﾛﾁ」のようにくねって飛散しています。
おそらく通常の固定法では解決できない別の力が
働いた可能性もあります。
「長崎文化放送」の掲載写真
『石見神楽』は島根県西部の
石見地域で演じられる神楽のことです。
その由来は古く、平安末期から室町時代に
石見地方一円で、農耕神的なものとして
村々に祀られている行事です。
各々の集落での神の行事が原型と言われています。
「ﾔﾏﾀﾉｵﾛﾁ」はその中の花形演目で、
多くの神楽上演において最終演目として披露されています。
日本神話におけるｽｻﾉｵ尊の八岐大蛇（ﾔﾏﾀﾉｵﾛﾁ）退治を
題材とした内容の舞いが見られます。
数頭の大蛇がｽｻﾉｵ尊と大格闘を繰り広げる壮大なｽｹｰﾙなのです。
私の故郷の神社でも秋祭りには良く行われていました。
その時の終わりの「ﾔﾏﾀﾉｵﾛﾁ」の姿が
このR型金属屋根飛散に良く似ているのです。
「島根観光ﾅﾋﾞ HP」より
明治時代までは鱗を描いた白衣をきていたそうです。
舞手であり神官でもあったU氏が大蛇を、
吊り下げ式の提灯に着想を得て、
現在の蛇腹式胴体を開発したとされています。
石州和紙と竹のみという軽量な造りで、
自在に伸縮しのたうつ蛇胴を表現し、
舞に説得力を持たせることに成功したようです。
大蛇が数頭登場するようになったのは戦後で、
それ以前は原則一頭のみで、
戦後しばらくの間も最大二頭の登場だったらしいのです。
(私が見たのは二頭だったような気がします)
「島根観光ﾅﾋﾞ HP」より
さて上記表現の「軽量な造りで、自在に伸縮し」が
今回の屋根の飛散のﾎﾟｲﾝﾄになるのではないかと思われます。
少なくとも、東側の有明海側から吹いた強風で
左右の嵌合部も外れてしまっています。
写真は海より反対側(西側)の下地C型鋼に
固定されていたﾎﾞﾙﾄ周辺部がかなり錆びています。
そして屋根材には通常の平板屋根材とは異なる
「蛇腹状のﾘﾌﾞ」が施されています。
この材料の形状は材料を(ﾋｽﾞﾐ・ﾖｼﾞﾚ・ｱﾊﾞﾚ等)から
吸収し易いようにと考えられた考えが別の要因となって
被害をもたらしたのかも知れません。
「長崎文化放送」の掲載写真
下の写真は少しﾎﾞｹていますが、
赤色四角部分を拡大したものです。
ﾎﾞﾙﾄ固定箇所に錆が多く発生しているのが確認されます。
おそらく、海側の下地はもっと酷く錆びて
破断しているものと思われます。
「長崎文化放送」の掲載写真
少し気ななる事に下の写真はこの体育館を西側から見た
2022年5月のｸﾞｰｸﾞﾙﾋﾞｭｰです。
赤色四角の箇所を拡大して見ると⇒の箇所が
少し濃いい屋根となっています。
気のせいなのか、ﾋｮｯとして過去にも同じ箇所が
強風被害に合って修理したのかも。
などと考えてしまいます。
ｸﾞｰｸﾞﾙﾏｯﾌﾟｽﾄﾘｰﾄﾋﾞｭｰ(S市体育館2022年5月)
同じように2025.年2月のｸﾞｰｸﾞﾙﾋﾞｭｰを見ると
R型金属屋根がすっかり撤去されている写真です。
屋根は修理されなくて、
他の場所への移転が決定していたようです。
ｸﾞｰｸﾞﾙﾏｯﾌﾟｽﾄﾘｰﾄﾋﾞｭｰ(S市体育館2025年2月)
いろいろと勉強になったS市の体育館屋根でした。
ところでこの台風10号被害では
もう一つ大きな事件が発生しています。
それは宮崎に於ける「竜巻」です。
「竜巻」については以前でお話しました。
次回は台風に伴う「竜巻」について少し学んでみましょう。
ありがとうございます。